「検索サイトを管理するGoogleに削除義務があるのは当然だ」
一歩踏み込んだ司法判断が波紋を呼んでいる。
日本人男性が自分の名前を検索すると、過去に犯罪行為をしたかのように連想させる投稿記事が多数表示されることから、米Google本社に検索結果を削除するよう求めた裁判。東京地裁は10月9日、男性の訴えを認め、検索結果の一部を削除せよとの仮処分命令を出した。この命令を受け10月22日、Googleは「裁判所の決定を尊重する」として、削除対象になった122件の表示を完全に削除する方針を明らかにした。
日本初の司法判断と言われるが、何が「初」なのか。弁護士の清水陽平氏が言う。
「Googleはことあるごとに検索エンジンは『自動的かつ機械的に、サイトの記載内容や所在を示したに過ぎない』ということを主張してきた」
これまでの司法判断は、掲示板やブログサイト(コンテンツプロバイダ)に書かれた誹謗中傷が削除の対象であり、検索サイトはこれにはあたらない、というものだった。しかし東京地裁は検索結果を提供している者もコンテンツプロバイダであるという判断を明確に下した。
事実無根の誹謗中傷が検索の上位に表示される。サジェスト機能(検索ワード候補を予測表示する機能)により中傷や犯罪への連想批判が表示される。人は上位に表示、連想された記事から順番に読む。多くのネット利用者は、検索結果の表示自体がコンテンツだということを、当然認識している。
ではなぜそういう当たり前の認識が、今まで裁判所になかったのか。「おそらくGoogleの主張に引きずられて,不法行為の判断をしてきたためではないか」と前出の清水氏は言う。不法行為では、損害を与えているのが誰かに焦点が当てられ、機械的に表示しているだけの検索エンジンは関係ないという理屈だ。この男性の代理人である神田知宏弁護士は、人格権の侵害を前面に打ち出し争った。
その結果、人格権を侵害するコンテンツが検索結果に存在していれば、侵害があったとみなされるとする司法判断を導き出した。これには、EU最高裁で出された「忘れられる権利」についての判決も、裁判官に影響を与えているかもしれない。
従来のこうした案件には「Google日本法人には検索結果に対する管理権・編集権限がないという理由で、訴えが却下されてきた苦い歴史」(中澤祐一弁護士)がある。当初多くの弁護士が日本法人を相手に戦っていたが負け続けてきた。近年インターネット法務に精通した法律家の出現で、海外のネット企業を直接訴えて勝訴するケースが出てきた。FC2.inc(ネバダ州)、Twitter(カリフォルニア州)、Facebook(アイルランド法人)に対して、違法コンテンツ削除や発信者情報開示命令(投稿者の特定を命じる)などを命じた判決がそれだ。
東京地方裁判所を舞台に、外国人相手にやり合うシーンも増えていくに違いない。弁護士だけでなくこの分野に明るい裁判官も増えつつある。グローバルなインターネット事件に関して、今後日本の司法がどう立ち向かっていくのか、注視したい。
参照:プレジデント
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