2015年2月18日水曜日

弁護士の「弁護士事務所離れ」が加速している件について

■ブラック法律事務所が増加?
ブラック企業叩きが止まらない。ブラック企業という意味不明な概念が独り歩きをする。右を向いても左を見てもブラックだらけ。ついに法律事務所もブラックと認定されるご時世だ。

 弁護士の就労時間は専門分野にもよるが、昔から総じて長いのは職業柄仕方のないことであろう。とは言え、社会的な使命を感じ、依頼者からの感謝を励みに、長時間勤務を乗り越えることができた。しかし、それは程度の問題でもある。神戸新聞に、『移籍、転職 漂う弁護士 若手酷使「ブラック事務所」増加?』という記事が掲載された。

■法律事務所の長時間勤務の実態とは?
記事の中で、朝9時半から翌日の午前2時、3時まで働き、17時間勤務はザラと嘆く20代の弁護士を紹介している。そのような生活から体調を崩す弁護士が少なくなかったという。

弁護士の就労時間を調査すると、週平均46~47時間との結果になった。また、都市と地方における労働時間にはさほど違いがみられないことも分かった。当然のことながら平均労働時間をはるかに超える弁護士は存在する。長時間労働の影響だろうか、所属する弁護士会を変更する"登録換え"がここ数年急増しているという。2004年あたりからその傾向がはっきりとデータで読み取れる。

■企業の弁護士が注目される!?
2013年の登録換えは597件、04年の3.5倍に達した。さらに、弁護士本人による登録取り消しも増加した。若手弁護士が率先して所属先を変更する動きが目立つ。司法制度改革の影響による就職難、弁護士事務所の競争激化が、新人・若手弁護士を直撃している。

法律事務所に見切りをつけ、外資を含めた企業内弁護士(インハウスローヤー)、公務員へ進路変更を目指す若手がにわかに注目を浴びる。インハウスローヤーは年々増え、登録弁護士数の約3%を占めるようになった。今年に入り企業で働く弁護士は1000人を突破。

採用企業は、三菱商事・三井物産などの総合商社及び、三井住友銀行、みずほ証券・野村證券に代表される大手金融機関に広がる。(日本組織内弁護士協会より)商取引、国内外企業のM&Aといったグローバル企業には法律のサポートが欠かせない。

従来なら顧問弁護士が紛争解決、契約書作成といった業務を担当したが、迅速な意思決定、コスト削減等々で、社内弁護士を配置する動きが活発になっている。法務部に弁護士を在籍させるオーソドックスなケースがみられるものの、コンプライアンス部門を創設して、危機管理全般を任せる企業もみられるようになってきた。

リーガル・リスクマネジメントの最前線に身を置き、ビジネス現場の臨場感を味わいつつ、直接経営に影響を与えることができるのが企業内弁護士といえる。アメリカの弁護士におけるインハウスローヤーは15%を占め、ビジネスパーソンとして企業法務に携わる。

日本の上場企業では、契約交渉、紛争処理を、渉外法律事務所から、インハウスへ転換する流れが徐々に拡大しつつある。企業のビジネスローヤーは今後、着実に増えると予想され、弁護士採用が活発化するのはほぼ間違いない。

法律事務所からの転職組、就職難が深刻化する新人弁護士にもその触手を伸ばす。通信業界では法曹資格のない法科大学院卒を、積極的に採用する動きが活発になる。

一部の若手弁護士に広がりつつある事務所離れは、企業内弁護士という新たなワークスタイルと相まって、複雑な様相を呈している。イソ弁だろうが、事務所を構えようが、企業内弁護士だろうが、法務パーソンにとって働く選択肢が増えることは歓迎したいものだ。

参照:シェアーズカフェ・オンライン