2015年2月19日木曜日

後見制度支援信託の利用大幅増 高齢化で拡大見込む 埼玉

 認知症などで判断能力が不十分な高齢者のまとまった財産を成年後見人が信託銀行に預け、手元の口座に残した資金を生活費に充てる「後見制度支援信託」の県内での利用が平成26年に約220件に上る見通しとなったことが18日、さいたま家庭裁判所への取材で分かった。24年の制度開始から2年間の利用件数は計2件にとどまっていた。同家裁は「導入3年目で本格始動となった。今後、高齢化の進展に伴い利用の増加が見込まれる」としている。


 制度は後見人を務める親族らによる財産の不正流用が全国で多発したことを受け、24年2月に導入。だが、同家裁管内では24、25年の利用が各1件にとどまり、県内では25年に親族後見人らによる不正が23件発生、被害総額は2億8090万円に上った。

 同家裁は25年夏から、被後見人の資産額が1千万円程度以上の場合、親族後見人らに利用を促してきた。その結果、商品を提供する三井住友信託▽みずほ信託▽三菱UFJ信託▽りそな-の4行と契約を締結した26年の件数は約220件となった。後見人が通常の預金のように簡単に引き出せなくなるため、25年の不正でも多くのケースで被害を軽減できた可能性があるという。

 県の推計によると、65歳以上の認知症高齢者は26年1月現在で約16・5万人だが、37年には約40万人に。認知症で判断能力が衰えた場合には成年後見の対象となる可能性が高く、被後見人の増加が見込まれる。

 一方で、多額の資産管理を担当することが多い弁護士や司法書士ら専門職後見人の後見業務は長期間にわたり、1人当たりの受任件数にも限りがあるため、絶対数の不足が懸念されている。

 支援信託を利用すれば、専門職後見人は信託銀行との契約締結後に辞任し、新たに選任された親族後見人や各自治体が養成を進める市民後見人に引き継ぐことができる。

 同家裁の担当者は、専門職後見人の負担減につながるため、将来的に普及がさらに進むとの見方を示し、「財産を適切に管理する方法の1つで、後見人の『多額の財産を管理しなければならない』という重圧を弱められるほか、不正を防ぐことができる」と話している。

参照:産経新聞