2015年2月12日木曜日

いじめやパワハラが頻発する職場の特徴・続編

 企業の取材を続けていると、いじめやパワハラの存在を感じさせる会社や職場は少なくない。それを観察していると、いくつかの共通項があることに気づく。共通項といっても、少なくとも10はある。今回も、前回に続き、5つの特徴を紹介したい。転職などで会社を選ぶ時などの参考にしてもらえれば幸いだ。現在、勤務している会社で、いじめやパワハラなどが頻発するようなら、以下に挙げる5つのうち、どれかが該当している可能性が高いだろう。

1.親会社から幹部が下ってくる会社

 今や、多くの企業がグループ化しているが、それらは、親会社、純然たる子会社、関連会社に分けられる。子会社や関連会社の場合、親会社から中高年の人が出向・転籍するケースがある。例えば、親会社で本部長にはなれなかった部長とか、いつまでも課長が昇進できないといった“中途半端”な管理職だ。この人たちが子会社や関連会社にやってくると、自分を大きくみせようとして、20代、30代の少々、生意気な社員などを押さえつけようとすることがある。逆に、優秀な社員もそのターゲットになりやすい。これは、劣等感の裏返しであり、単にそれをぶつけようとしているのだ。自分のコンプレックスを元に、いじめをする上司は極めて厄介だ。深入りせず、距離を保つように心がけたほうがいい。

2.“中途半端”な高学歴社員が多い会社

「高学歴」の定義に明確なものはないが、この場合は偏差値ランキングでいえば、国公立と私立を合わせて上位10位以内の大学を指す。このクラスの大学出身者が8~9割を占めるような企業も、いじめやパワハラがよく見られる。特に、管理職になれず30代でゆきづまった社員が、20代の後輩社員をまるで「部下」のように、こき使う傾向がある。その30代の社員は管理職ではないのだから、本来は自分の「部下」ではないのに、機会あるごとに命令口調で、押さえつけようとする。これも、もともと自尊心が高いため、自分の立場が脅かされないよう、虚勢を張って大きくみせようとしている場合が多い。

3.「徒弟制度」がある会社

 今の時代、さすがに明治時代のような職人の徒弟制度がある会社は少ないだろう。だが、一部の職種には、そのような体質が染みついている。私がここ十数年、取材で感じ取った限りでいうと、例えば、飲食店などの料理人、新聞記者、コピーライター、テレビ局やCM制作会社のディレクター、映画監督、プロデューサーなどがそうだ。また、一部のコンサルタントや弁護士にも散見される。こういう職種に就く場合、一定期間、上司や先輩の下に付くことが多い。これが、よく見られるところの師弟関係ではなく、中学生レベルのいじめになることが少なからずある。

4.労働組合がない会社

「労働組合なんていらない」と、口にする人がいる。特に、20~30代に多い。今から20~30年前にも、20~30代は労組について冷めた態度をとる人がいた。それもひとつの考え方なのだろう。たしかに、労組があったところで、解決できないことはたくさんある。しかし、労組は経営側に対し、「最低限度のブレーキ」として機能するもの。例えば、大規模なリストラをする場合、退職者の数を少しでも減らすよう働きかけるとか、労働時間を可能な限り、減らすことを経営側に提案する。要求どおりになる可能性は低くとも、通常は、そのような方向に歩み寄っていくものだ。

 このように労使のバランスがうまくとれている会社は、いじめやパワハラも少ない傾向がある。管理職からしてみれば、部下が労組の幹部に「あの上司のパワハラがひどい」と訴えられることを警戒しなければならない。こうして労組から人事部などに苦情が伝えられると、一段とややこしい問題になるからだ。だが、労組がない場合、そういった「最低限のブレーキ」が存在しないため、それを訴えることができず、いじめやパワハラが蔓延するきっかけになりかねない。

5.社長が創業者で、ワンマンで、カリスマ

 このケースは、働く側からすると、何かと苦労することが多い。特に、30~50代の中堅社員、幹部はその場の雰囲気などを察知し、相当、上手に立ち回らないと、社長から激しく叱られたり、辞めることを促がされたりする。このタイプの社長は、天才的な一面がある一方で、気性が激しく、感情の起伏が激しい場合が多い。創業者であり、大株主でもあるから、社内において怖れる者がいないのだ。たとえ、労組があったとしても、このような社長の前では、なかなか強くは発言できないだろう。

 こういう会社では、社長の信用を得た管理職の発言力が強くなり、部下に対しても激しく叱責するようになる。時には、罵倒したりして、社長の権力をかさに、強引に自分に従うよう要求する。その管理職の横暴な言動を社長に直訴する人がいないことを知っているからだ。他の幹部も結局のところ社長のイエスマンばかりで見て見ぬフリをする。これでは、部下たちは順番に潰れていくことになりかねない。

 2回にわたって紹介した、いじめやパワハラが頻発する職場の特徴を読み返していただくと、その理由が、ある程度は見えてくるだろう。最後に、前回の記事でも書いたことを繰り返しておきたい。いじめやパワハラは、その程度や内容によっては、社会常識や法律に抵触するものがある。特に、退職強要などは、民法の損害賠償の請求対象行為であり、決して許されないものだ。どんな職場でも、いかなる理由があろうとも、否定されなければいけない。

参照:@DIME