政府の法曹養成制度改革推進室は21日、司法試験の年間合格者数について「当面は1500人程度を下回らないようにすべきだ」とする検討結果の取りまとめ案を公表した。司法制度改革で「年間3000人」の目標が掲げられたが達成されないまま撤回されていた。現状の合格者を下回る数字だが、法科大学院受験者が減り続ける中で、質を維持しながら一定数の法律の専門家を確保するために新たな目標を示すことにした。
取りまとめ案は法科大学院や司法試験のあり方を議論している有識者会議に報告された。司法試験の合否は法曹三者(裁判官、検察官、弁護士)や学識経験者で構成する法務省の「司法試験委員会」が判定する。今回の数値目標が合格者数を直接左右するものではないが、法科大学院の入学定員設定などに影響を及ぼしそうだ。
司法試験合格者は1990年ごろまで500人前後だった。政府は司法制度改革の一環として「質・量ともに豊かな法曹」の養成を目指し、2002年に「10年には年間3000人程度」との目標を閣議決定。04年度以降74校の法科大学院が開校した。
だが、司法試験合格者は1800~2100人程度で推移し、「3000人」の目標は13年に事実上撤回された。この間、法科大学院受験者は大幅に減少し、募集停止も相次いだ。今年度入学者を募集した54校(定員3169人)の受験者は延べ9351人で初の1万人割れとなった。
司法試験の合格者を巡っては、法曹人口拡大という改革の理念を守るべきだという意見がある一方で、人数が増えすぎると就職難や質の低下を招くとの指摘が出ていた。このため同推進室は市民や企業にアンケートするなどして法律家の需要を調査。取りまとめ案では現状の合格者数を「法曹資格を得た多くの人が活動の場を得ており、一定の相当性がある」と評価したうえで、法科大学院制度の開始直前と同程度となる1500人前後の合格者を最低限維持すべきだと判断した。
取りまとめ案は、関係6閣僚で構成する法曹養成制度改革推進会議が7月までに示す改革に向けた提言にも盛り込まれる見通し。
【ことば】司法試験
原則として法科大学院の修了者だけが受験できる資格試験。当初は「法科大学院修了者の7~8割が合格できる」とされたが、合格率は平均20%台と低迷。昨年までの累積合格率も平均約49%にとどまり、法科大学院の受験者減少につながった。一方で経済的事情などにより法科大学院に通えない人に司法試験の受験資格を与える「司法試験予備試験」の出願者が増加。昨年初めて法科大学院受験者を上回った。
参照:毎日新聞
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