2015年8月6日木曜日

<衆院法務委>司法取引など修正案可決 適正運用担保を明記

 衆院法務委員会は5日、警察・検察による取り調べの録音録画(可視化)義務付けや日本版司法取引の導入、通信傍受の対象犯罪拡大を柱とした刑事司法改革関連法案の修正案を共産を除く与野党の賛成多数で可決した。修正案は自民、公明、民主、維新4党の共同提出で、司法取引や通信傍受のより適正な運用を担保する項目を明記した。7日に衆院を通過し、今国会中に成立する見通し。

  司法取引は経済事件や薬物銃器犯罪などを対象に、容疑者らが他人の犯罪の解明に協力する見返りに、検察官が起訴を見送ったり求刑を軽くしたりできる制度。野党から「虚偽供述で無実の第三者が冤罪(えんざい)に巻き込まれる恐れがある」との声が上がっていた。

 修正案には、検察官が取引をするか否かの判断材料として「犯罪の関連性の程度」を明記した。これにより取引をする容疑者らと全く無関係の事件は事実上、対象外となる。また、司法取引の過程に弁護人が常に関与するよう規定を改めた。明文化はしないが、捜査機関に取引に関する記録も作成させる。

 国会審議でプライバシー侵害の恐れが指摘された通信傍受では、傍受したことを対象者に通知する際、傍受された内容を確認することや不服申し立てができることも併せて通知するよう修正した。

 現行法では傍受の際に電話会社担当者の立ち会いが必要だが、政府案では録音データを改変できない機器を使えば不要になる。「歯止めが利かなくなる恐れがある」との批判もあり、該当事件の捜査と関係ない警察官が立ち会う運用をする。

 可視化が義務づけられるのは、裁判員裁判対象事件と検察独自捜査事件で逮捕・勾留された容疑者の取り調べ全過程。「対象範囲が狭い」との指摘もあったが修正には至らず、「対象事件外でも幅広く可視化するよう努力すべきだ」との付帯決議が可決された。

 民主、維新両党は先月、司法取引の導入見送りなどを盛り込んだ修正案を公表し、与党側と協議していた。

 ◇刑事司法改革関連法案の骨子

・裁判員裁判対象事件と検察独自捜査事件の取り調べの全過程を可視化(3年以内)

・容疑者や被告が他人の犯罪事実を明らかにした場合、検察官が見返りに起訴を見送ったり求刑を軽くしたりできる日本版司法取引を導入(2年以内)

・証人に対し、刑事責任を追及しないとの条件で不利なことを証言させる刑事免責制度を導入(2年以内)

・通信傍受の対象犯罪に組織性が疑われる詐欺や窃盗などを追加(6カ月以内)。通信内容を暗号化できる機器を使えば電話会社の立ち会いは不要(3年以内)

・裁判所による保釈の判断を「逃亡、証拠隠滅の恐れの程度や健康上、経済上の不利益を考慮する」などと明確化(20日経過後)

・検察官が被告側に証拠の一覧表を開示(6カ月以内)

・勾留された全ての容疑者に国選弁護人を付ける(2年以内)

※かっこ内は公布から施行までの期間

参照:毎日新聞

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