2015年7月9日木曜日

身元保証人は借金の保証人とどう違う?

■身元保証の責任は身元の保証に非ず

 親戚の大学生から「就職が決まったから、身元保証人になって」と頼まれたとしよう。「身元」とは、辞書的にはその人の経歴や素性を意味する言葉だ。だから、「彼の経歴や素性が確かであることを保証する推薦状のようなものだろう」と考えるのは自然なことだ。しかし、法的な意味合いはこれとは異なる。身元保証人とは、労働者が会社に対して債務を負った場合、その債務を保証する人のこと。たとえば身元保証された人間が商品を壊したり、お金を使い込むなどして損害を賠償しなければならなくなったとき、身元保証人は債務を肩代わりする責任を持つ。借金の保証人に似たものだ。

  それどころか、身元保証人が負うリスクは借金の保証人より高いという。千葉博弁護士は次のように解説する。

 「借金の保証は、すでに発生している債務に対する保証なので、額や利息を確かめて判断できます。一方、身元保証は、サインの時点で債務が発生していません。つまり、最悪いくらになるのかということがわからないまま判断を迫られるのです」

 それではあまりに身元保証人が気の毒だ。そこで身元保証人が負うべき責任に関しては、民法と別に「身元保証法」で制限がつけられている。
 
 まず期間について。期間の定めがない場合、保証契約は3年で失効する。期間の定めがある場合も最長5年まで。契約に自動更新を盛り込んでも無効になる。

 また、発生した損害額すべてを賠償する必要もない。

 「身元保証人の責任や金額は、会社側の監督責任など、諸事情が考慮されます。たとえば従業員が横領した場合、監督すべき会社側に過失があると判断されれば、身元保証人の責任が限定されます」

 判例を見ると、身元保証人の責任範囲は、「発生した損害額の2~3割程度」が相場だという。新入社員に身元保証人を立てさせる会社側も、身元保証人を立てさせておけば安心、というわけではないことを知っておくべきだろう。

■立てられなければ採用取り消しも

 身元保証のサインをする前に確認すべきことが2点ある。1つ目は連帯保証なのか、連帯のつかない保証なのか。連帯保証のほうが債務から逃れにくい。2つ目は、会社の評判。ブラックな要素が濃い会社だと、本来は会社が負担すべき損害を従業員に押しつけてくる可能性がある。

 ではもし、入社を希望する社員が会社から要求された身元保証人を立てられなかったらどうなるのか。

 「企業には採用の自由があり、身元保証人を立てられない人の入社を断ることが可能です。ただし、たとえば内定時に説明がなく入社直前に保証人を求めたり、不合理な保証契約の場合は、契約解除が無効と判断されるかもしれません」

 サイン拒否で親戚の子が入社できなくなると心が痛むが、くれぐれも判断は慎重に!
 
参照:プレジデント

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