2012年12月20日木曜日

誰にでもマッチする万能弁護士はいない あなたに合った弁護士の見つけ方

トラブルに巻き込まれ、弁護士に仕事を依頼したいとき、どうしたらいいのか。誰にとっても、どんなトラブルでも対応できる、万能な“良い弁護士”などいない。あなたとの相性が合う弁護士を選ぶことが重要なのだ。


立派な肩書きでも100%信用はできない

 ある県の弁護士会会長まで務めた弁護士(80歳)が、成年後見制度を悪用し、成年後見人のおカネ約265万円を着服したことが発覚した。2012年秋、弁護士が所属する県の弁護士会は、業務停止2年の懲戒処分をし、業務上横領の容疑で刑事告発もしている。

 別の県では、弁護士の不祥事を調査する綱紀委員など、弁護士会の要職に就任していた弁護士(66歳)の不正が発覚した。この弁護士は、成年後見人である女性の弟を監督する「成年後見監督人」にも選任されていた。綱紀委員や成年後見監督人は、いずれも不正をチェックする立場である。

 にもかかわらず、弁護士は弟に「裁判所から指示があった」と嘘をつき、女性の口座から8回にわたって合計約4400万円を自分の銀行口座に振り込ませ、生活費や事務所経費に流用した。弟が裁判所に問い合わせて発覚し、2012年秋に詐欺の容疑で逮捕された。

 残念ながら、弁護士の中にも依頼者に対して刑事上の犯罪になるようなことを行う人がいる。「立派な肩書きの弁護士だから大丈夫だろう」と100%信用することはできないのだ。

 依頼者から預かっている財産を弁護士が着服する事例は、成年後見に限った話ではない。裁判所への訴訟費用等、実費に使うための「預り金」を弁護士に預けることは多い。その預り金を着服される事件もある。

 いつ頃、何に使うかも明確に説明せず、多額の預り金を要求されたら警戒した方がよい。


「法律相談」で見分けたいダメ弁護士の例

 前述したような犯罪には至らなくとも、トラブル解決を依頼したのに、弁護士とトラブルになっては、本末転倒だ。依頼後にトラブルになりがちな弁護士の例をいくつか紹介しておきたい。依頼前の「法律相談」で見分けられるので、参考にしてほしい。

●相談者の希望や要求を聞いてくれない。
 高圧的な説教や自慢話をする弁護士は、相談者の話を聞いていないことが多い。また、「これが良い」と決めつけて、勝手に相手方と示談するような弁護士もいる。依頼するのは、あくまで相談者自身の問題の解決のためだ。相談者の要望を聞こうとしない弁護士には、注意が必要である。

●具体的な相談内容に関する質問がない。
 話を聞いているようにみえても、どのような証拠があるか、どういう時間の流れで問題が生じたのかなど、事件の解決に必要なことを尋ねない弁護士には、要注意。質問をしない弁護士は、早飲み込みで、依頼者の意思に沿わない的外れな法的手続きをする可能性がある。

●疑問点などを尋ねても教えてくれない。
 疑問点や、分からない法律用語などは、分かるまで遠慮なく質問をしよう。分かりやすいかどうかは弁護士との相性の場合がある。しかし、質問を嫌がり、答えようとしない弁護士は、結局、相談者が求める解決をしてくれない可能性がある。

●解決の見通しを説明しない。
 解決までどのように進む可能性が高いかといった説明がないと、そもそも何を依頼して良いか分からない。相談時点で、考えられる解決策はいくつかあることが多い。各解決策について、時間や費用、メリット、デメリットなどの見通しを説明しない弁護士には、要注意。

●相談者にとって良いことしか言わない。
 明るい見通しだけを示して、不利な点を指摘しない弁護士を、頼もしい先生と思ってしまいがちだ。しかし、不利な点は、後々、相手方から反論され、予期しないリスクになる。安易に「必ず勝てる」と断言する弁護士は、勉強不足か、依頼目当てという穿った見方もできる。


気軽に早めに「法律相談」してから「依頼」する弁護士を選ぼう

 弁護士は“選んだ後に相談する”のではなく、“相談した後に選ぶ”ことをお勧めしたい。

 言うまでもなく、「法律相談」と「依頼」は別のことである。法律相談と依頼を混同しがちなのは、数年前までは、弁護士も情報発信に熱心でなく、また、「一見客お断り」の弁護士が多かったためではないだろうか。弁護士を「探す」=「選ぶ」になりがちで、知人に紹介してもらい、相談した弁護士にそのまま依頼することも多かった。

 今は、弁護士の広告も解禁され、インターネットでも情報発信する弁護士は急速に増えている。自治体、法テラス、弁護士会など、法律相談機関の情報も入手できる。「一見客お断り」の弁護士は減ってきている。弁護士を探すことは容易になった。

 法律相談は、複数の弁護士に相談しても構わない。最初に相談した弁護士に、依頼しなければならないわけでもない。急いで対応すべき問題でなければ、若干の費用と手間はかかっても、複数の弁護士に相談してから、誰に依頼するかを決めて良いのだ。

 弁護士を探して、複数の弁護士に相談をした後に、自分に合う弁護士を選び、依頼するという順番でいいのだ。

 あなたの相談を受けた弁護士は、そのトラブルについて、弁護士が介入すべき段階に達しているかを判断することが多い。まだ介入すべきでないと思えば、あなたにそう伝えるし、弁護士が介入すべき段階だと思ったら、このような解決策が考えられると提案をするだろう。

 あなたはその弁護士と相性が合うかどうかを確かめ、あなたのトラブルに合った解決策の提案なのかを考え、費用の見通しを聞いてはじめて、依頼するか否かを決めればいいのだ。

 初めての相談については、30分5000円という弁護士が多いが、初回の相談はすべて無料とか、分野限定で無料という弁護士も登場している。

 弁護士に依頼すると、トラブル解決まで、弁護士とあなたは、何度も面談をしたり、電話をかけたり、手紙を送ったりと、連絡が続く。あなたも何十万円、何百万円といった弁護士費用を支払わなければならなくなることもある。

 最初の法律相談の段階で、若干の費用と手間を惜しんで依頼すると、後悔することになりかねない。

 法律相談は、気軽に早めにが、鉄則だ。

 極端にいえば、トラブルが複雑化・長期化してから「良い弁護士」を探し出して依頼するよりも、弁護士なら誰でもいいので、悪化する前に相談するほうがトラブル解決には役立つ。重い病気でも、早い段階なら治療が容易なのと同じだ。


弁護士の能力や経験よりあなたとの相性が大事

 あなたと弁護士との相性は、満足できる解決を得るための重要なポイントだ。極論すれば、弁護士の能力や経験より、あなたとの相性のほうがはるかに重要である。

 漠然と “良い弁護士”がどこかにいると思ってはいないだろうか。そんな人はいない。他人の評判、肩書きがいい弁護士が、あなたとの相性が良いとは限らない。直接会って相談して、波長が合う、信頼できる、話しやすい、と感じる弁護士を選ぶのがよい。

 もし、相談してみて、疑問を感じたら、疑問点はきちんと弁護士にぶつけてみよう。それでも、まだ何か心に引っかかりがあるようなら、あなたには適さない弁護士であることも多い。相談してみて、その弁護士の言うことに不安を感じたり、弁護士がそもそも信用できなければ、別の弁護士を探せば良いのだ。

 なぜ、弁護士との相性が重要か。弁護士には最も話したくないことを、話さなければならなくなることもあるからだ。

 裁判になったとき、あなたが最も言いたくないことこそ、勝敗を決することも多い。あなたに不利なことを弁護士に話さなかったとすると、弁護士は、それを知らずに、裁判所に提出する「訴状」を作成するだろう。その後、相手が依頼した弁護士からあなたに不利な証拠を出され、防戦一方の展開になるおそれもある。

 弁護士との相性が悪く、自分に都合の良いことしか伝えられなかった場合、弁護士がいくら優秀であっても、あなたの望む解決にはならないだろう。

 それより、極端に言えば、同種の事件を扱ったことがなくても、熱意と調査能力があれば、相性が合う弁護士の方が良い結果を生む可能性が高い。

 さらに、裁判とどう関わりたいかによっても、弁護士の選び方は変わってくる。

 例えば、「訴状」を作るにあたっても、(a)あなたと面談をしながら原案を一緒に作ってみようという弁護士、(b)面談後、弁護士が作った原案をメールや郵送等であなたに渡し、「意見を聞かせて下さい」と求める弁護士、(c)あなたとの面談を受けて作成した「訴状」を、あなたに見せることなく裁判所に提出する弁護士もいる。

 もしも、あなたが「自分の裁判だから、自分も関与したい」と考えている場合に、面談後、勝手に「訴状」まで出されていたならば〈(c)のタイプ〉、「なぜ、自分が見てもいない訴状を勝手に出すのか」と不満を持つだろう。逆に、あなたが忙しく、「裁判は全部弁護士に任せたい」という希望を持っているのに裁判ごとに呼び出された場合〈(a)のタイプ)、「毎回、呼び出されるのであれば、弁護士に頼んだ意味がない」という不満を持つだろう。

 このマッチングがぴったり合うと、あなたにしっくりくる最適な弁護士になるだろう。

参照:ダイヤモンド・オンライン

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