2013年7月3日水曜日

安愚楽牧場 虚偽報告を使い分け 消費者庁、矛盾見逃す

 経営破綻した安愚楽牧場の旧経営陣らによる特定商品預託法違反事件で、同社が税務当局に「赤字」と申告する一方、出資者には毎年「黒字」と虚偽の報告を続けていたことが2日、関係者への取材で分かった。監督する農林水産省は破綻前の調査でこうした資料を入手していたが、業務を引き継いだ消費者庁は十分な監査や指導を行わずに矛盾を見逃していた。被害者側は「国の不作為が被害拡大の要因」として国家賠償請求訴訟を検討している。

 元社長の三ケ尻久美子容疑者(69)ら旧経営陣の逮捕から同日で丸2週間。弁護士によると、三ケ尻容疑者は当初、容疑を否認していたが、認める供述を始めているという。

 関係者によると、同社は確定申告で、純資産が平成19年にマイナス67億円、20年にはマイナス40億円などと債務超過を示す書類を税務署に提出。少なくとも11年以降の10年間、法人税を納付していなかった。

 一方、出資者向けの事業報告書では、契約満了時に返還される出資金を「売上金」に計上し、売上金が毎年伸びているように偽装。畜産事業は赤字だったのに、年間で最大5億円の利益が出たなどと経営の順調さをアピールしていた。

 同社の財務資料を分析した大黒崇徳税理士は「新たに出資を募るのに債務超過であることを明らかにするわけにはいかず、利益が出ているように見せかける会計処理をしていた可能性が高い」と指摘する。

 監督官庁の農林水産省は同社が23年8月に破綻する約2年半前の21年1月、立ち入り調査で財務資料を入手。子会社への貸付金が計上されていないなど書類上の不備を指摘し、外部監査や財務状況を定期的に報告するように指示した。

 その後、同年9月に発足した消費者庁に資料ごと業務を引き継いだが、同庁は22年7月、同社が経営の改善状況などの報告を申し出た際、「必要があれば連絡する」と断っていた。

 同庁は破綻後に立ち入り調査し、19年ごろから出資者向けの繁殖牛が必要頭数の6割程度しかいなかったことを確認。景品表示法に基づく措置命令を出した。同庁は当時、報告を断ったことについて、「農水省が指摘した不備は改善されていた」などとしていた。

 農水省の調査直後の21年3月末の出資者は約4万8千人、出資額は約2900億円だったが、同社は実施するように指示された外部監査を行わず、破綻時には約7万3千人、約4300億円に拡大していた。

 全国安愚楽牧場被害対策弁護団の紀藤正樹弁護士は「農水省や消費者庁がもっと真剣に取り組んでいれば、ここまで被害は膨らまなかった。国の怠慢は明らか」と訴えている。
 
参照:産経新聞

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