2013年7月4日木曜日

公職選挙法 -SNSでの選挙運動はOK、メールはNG

 公職選挙法が改正されて、インターネットを使った選挙運動が解禁になる。これまでインターネットによる情報の伝達は、公職選挙法上の文書図画の頒布とみなされて、規制を受けてきた。候補者が選挙の公示日以降、ブログの更新やフェイスブックの利用を中断するのも、そのためだ。しかし今回の改正により、選挙運動用の文書図画はウェブサイト等で頒布できるようになった(改正公職選挙法第142条の3第1項)。

 インターネットによる選挙運動は、一般有権者にも解禁される。ビラ配りは敷居が高いが、ネットで投票を呼びかけるくらいならやってみたいという有権者も、今回の改正で選挙運動に参加しやすくなるだろう。

 ただ、有権者の多くは選挙の素人だ。正しい知識を持っていないと、よかれと思ってやった行為が法に触れるおそれもある。

 気をつけたいのは、電子メールの利用だ。今回の改正で電子メールによる選挙活動が認められたのは、候補者や政党等だけ。一般有権者が電子メールで特定候補への投票を呼びかけるのは違反だ。ただし、SNSのメッセージ機能は電子メールにあたらない。たとえばLINEで「○○候補に清き1票を」と送るのはセーフ。このあたりを混同して、うっかり電子メールで選挙運動をしないようにしたい。

 ツイッターの改変にも注意が必要だ。誰かのツイートを非公式リツイートするとき、文字数を調整するために一部を削るケースがある。こうした改変リツイートについて、落合洋司弁護士は次のように指摘する。

 「候補者を落選させるために虚偽の事実を公表したり、事実をゆがめて公にすれば、取り締まりの対象になります。候補者のツイートを改変してリツイートすれば、虚偽とまではいえなくても、事実をゆがめたという評価を受ける可能性はある」

 選挙運動の期間も意識したい。インターネット、リアルを問わず、選挙運動が許されているのは公示日から投票日前日まで。公示日前にネット上で「次の参院選で○○候補を国会に送ろう」と書き込むと違反になる。

 問題は、どのような書き込みが選挙運動にあたるのかという点だろう。判例・実務によると、選挙運動は、(1)特定の選挙において、(2)特定の候補者の当選を目的として、(3)投票を得または得させるために直接または間接に必要かつ有利な行為、とされている。これに照らすと、「あの政治家は優秀だ」は意見の表明なのでセーフ。「あいつを落選させろ」という書き込みも、選挙運動にはあたらない。

 細かく見ていくと違反となる書き込みは限られそうだが、そもそも一般有権者がネットに何か書き込むとき、公示日の前か後かを気にしなくてはいけない状況はおかしくないだろうか。

 落合弁護士は「事前運動の規制は撤廃してもいいのでは」と疑問を呈す。

 「選挙運動を無制限にすると、公示前から戸別訪問が行われて有権者が迷惑したり、お金持ちの候補者に有利に働きます。こうした弊害を抑えるために選挙運動期間を規制しているのですが、インターネットを使った選挙運動は相手の負担になりにくく、お金もかからない。禁止する理由はないでしょう」

 公職選挙法について、「言論の自由を過剰に規制する、問題のある法律」(落合弁護士)という評価もある。ネット解禁は、過剰な規制の一部緩和にすぎない。候補者はともかく、一般有権者にはもう少しのびのびと選挙運動させてほしいものだ。
 
参照:プレジデント

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