20世紀中は個人発明家が特許裁判を大企業相手に起こし多額の賠償金を手に入れた。彼らはパテントマフィアと呼ばれた。21世紀になると主として金融出身者たちが自分で発明せずに第三者から特許を買い取り、組織的に特許裁判を起こすようになった。ここで儲かるからである。
彼らはパテントトロールと呼ばれる。トロールは欧州の小人、巨人、妖精たちをいう言葉で厄介者という意味が含まれる。「となりのトトロ」のような存在もトロールの一種といわれるが、パテントトロールはそんないいものではない。製造業からみると金融出身者たちが金儲けのために製造の世界にやってきたような迷惑な連中でしかない。被害は推計によると年間8兆円を超えるといわれる。あまりにも大きいため米国では規制する法律をつくろうとしている。
金儲け連中の手口と泣きどころ
彼らのやり方を知っておかなければいけない。ホンダは圧倒的に原告訴訟が多かったが、それでもパテントトロール(以下トロールという)による被告訴訟もいくつかある。そこで負けないように対応できたのはトロールの仕掛けがどういうものであるか先に知っていたからであり、以下もそのような情報の1つである。
トロールはまず侵害判断が簡単ではない特許を選ぶ。企業に侵害警告がきたときにこれは侵害していないと簡単に判断できるならそこで費用は発生しない。しかし、例えば工場で使われている数千から数万本のプログラムのごく一部に関係する特許であれば、自社で使っているプログラムといえども解析するのに1億円近い金額が必要になることもある。
そのような侵害判断の難しさの点では機械産業より電子産業の方が狙われやすいのだが、ともあれ企業は1億円を使い解析するかどうかの判断を迫られる。普通、侵害警告がきたら相打ちを狙い、相手企業が自社の特許を侵害している可能性をすぐに調査し反訴を行うのだが、トロールは自ら製造していないためそれができない。
トロールが警告を送り付ける相手は、例えばアパレル、スポーツ用品、材料、食品、建設、電機、自動車、事務機器などの業種から1社ずつ選ばれる。工場で使うプログラムなどは共通性があるので業種横断的な仕掛けも成立する。トロールが最も嫌がるのは自分の特許を無効としてつぶされ、権利行使の根拠をなくすことだが、業種がバラバラで情報交換が不十分なようにしておき、無効の理由を知っている企業は手強い相手としてひそかに裁判からはずす。
各社が自社のプログラム解析費用の見積もりを終え、金額の大きさに途方に暮れる頃に、トロールは半分以下の金額、例えば3000万円を提示し、和解しないかと個別に囁く。それにより折れる企業が次々にでてくる。最後まで戦う企業は多額の費用を使うのだが、その上で素人の陪審員たちに自社が使っているプログラムが侵害していないと説得するのは、複雑な特許であればあるほど困難である。ここですぐに和解して折れる企業と認識されると次のときにもまた被告として選ばれることになる。
これだけでも知っておけば、被告企業間で連携し相手の特許をつぶすことに全力をあげ、金の続く限り戦うべきということになる。トロール側の仕掛けはトロールの仕事をしたことのある弁護士からアドバイスを受けながらこちらの作戦を考えればいい。結果として戦う姿勢のある強い企業は次では敬遠される。それが実戦の教訓である。
今、トロールの範疇に入る存在は全世界で数百ある。彼らは技術の進歩に全く貢献しない。パテントトロールという限り、そこにはトトロのような存在はいないのである。
トロールはまず侵害判断が簡単ではない特許を選ぶ。企業に侵害警告がきたときにこれは侵害していないと簡単に判断できるならそこで費用は発生しない。しかし、例えば工場で使われている数千から数万本のプログラムのごく一部に関係する特許であれば、自社で使っているプログラムといえども解析するのに1億円近い金額が必要になることもある。
そのような侵害判断の難しさの点では機械産業より電子産業の方が狙われやすいのだが、ともあれ企業は1億円を使い解析するかどうかの判断を迫られる。普通、侵害警告がきたら相打ちを狙い、相手企業が自社の特許を侵害している可能性をすぐに調査し反訴を行うのだが、トロールは自ら製造していないためそれができない。
トロールが警告を送り付ける相手は、例えばアパレル、スポーツ用品、材料、食品、建設、電機、自動車、事務機器などの業種から1社ずつ選ばれる。工場で使うプログラムなどは共通性があるので業種横断的な仕掛けも成立する。トロールが最も嫌がるのは自分の特許を無効としてつぶされ、権利行使の根拠をなくすことだが、業種がバラバラで情報交換が不十分なようにしておき、無効の理由を知っている企業は手強い相手としてひそかに裁判からはずす。
各社が自社のプログラム解析費用の見積もりを終え、金額の大きさに途方に暮れる頃に、トロールは半分以下の金額、例えば3000万円を提示し、和解しないかと個別に囁く。それにより折れる企業が次々にでてくる。最後まで戦う企業は多額の費用を使うのだが、その上で素人の陪審員たちに自社が使っているプログラムが侵害していないと説得するのは、複雑な特許であればあるほど困難である。ここですぐに和解して折れる企業と認識されると次のときにもまた被告として選ばれることになる。
これだけでも知っておけば、被告企業間で連携し相手の特許をつぶすことに全力をあげ、金の続く限り戦うべきということになる。トロール側の仕掛けはトロールの仕事をしたことのある弁護士からアドバイスを受けながらこちらの作戦を考えればいい。結果として戦う姿勢のある強い企業は次では敬遠される。それが実戦の教訓である。
今、トロールの範疇に入る存在は全世界で数百ある。彼らは技術の進歩に全く貢献しない。パテントトロールという限り、そこにはトトロのような存在はいないのである。
参照:WEDGE
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