2013年9月26日木曜日

ペットに遺産を残したい…飼育を条件に「遺言」や「信託」で

 自分が死んだらペットはどうなるのか? こんな不安を抱える高齢者は少なくない。

 昨年9月、飼い主を対象にしたペットのためのエンディングセミナーが大阪市内で開かれた。定員50人に対し、申し込みは70人以上。

 セミナーでは、遺言書の作成など具体的な手続き方法が紹介された。主催者の一人、本田みつ子さんは「動物を飼育するということは、一生飼うという責任を持つことです」と話す。

 ペット法学会副理事長の吉田真澄弁護士は「相続では、他の財産はいるが、ペットはいらないというケースもある」と説明する。

 相続手続きが終わったらペットが殺処分されるケースもあるという。こうした最悪の事態は、事前に家族で話し合うことで防ぐことができる。吉田弁護士は「ペットの飼育は世話の仕方など相性もある。餌や散歩の内容など詳細も詰めておいた方がいい」。

 ◆出した結論は…

 ペットを託す相手がいても飼育にはお金がかかる。託す相手がいない人もいる。日本では法律上、ペットに直接遺産を残すことはできない。だが、ペットを世話してくれることを条件に遺言を書き、間接的にペットに遺産を残す「負担付遺贈」は可能だ。

 大阪府内の一軒家で、1匹の猫と暮らす2人の女性。残された1人も亡くなった場合、猫はどうなるのか-。2人が出した結論は「2人が死亡したとき、猫を飼うことを条件にペット仲間の女性に家や土地を譲る」という遺言を書くことだった。同内容の負担付遺贈契約書も作成した。

 作成に関わった行政書士の川上恵さんは「遺言のメリットは死後に自分の意思が生かせること。何らかの手だてをしておくことで、今を安心して生きることができます」と指摘する。

 負担付遺贈の場合に注意が必要なのが、法定相続人の遺留分を侵害していないかどうか。遺留分の侵害があると、相続人は遺留分を求めて家庭裁判所に申し立てる権利がある。この女性2人のケースは慰留分が認められている相続人がいなかったため、問題はなかった。

 ◆民事信託も

 負担付遺贈に比べて手間が掛かるが、「ペット信託」という方法もある。

 福岡市のペット専門行政書士、服部薫さん((電)092・775・0418)は「信託はペットのために確実に財産を残せる。相続財産とは別に管理できるため、相続争いに巻き込まれません」と話す。

 ペット信託では、ペット飼育用の財産は飼い主が作った合同会社で管理する。このため、相続財産とは別に管理することができる。ペットが適正に飼育されているかどうかも信託監督人を置いて監督することができる。信託契約時、信託を終了する時期なども盛り込んでおけば、さらに安心できるという。

 福岡県内の主婦、田中佳代子さん(57)=仮名=は、20匹近く飼い猫がいるため、服部さんにペット信託を依頼。田中さんは「飼い猫の飼育費用は、ざっと計算しただけでも年間50万円。三女が猫の面倒を見てくれることになっているが、負担を掛けてはいけないと思い、信託を選んだ」。

 田中さんが(1)死亡(2)体が動かなくなる(3)認知症になる-など信託の開始時期の条件を細かく設定。条件を満たせば信託が始まり、三女に合同会社から月々決められたお金が支払われる。

 信託によって、田中さんは以前より安心して暮らせるようになったという。
 
参照:産経新聞

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