法科大学院への「公的支援の見直し」を盛り込んだ中間提言が9日、政府の法曹養成制度検討会議で了承され、一部大学院の淘汰(とうた)が現実味を帯びてきた。「年間3000人程度」という司法試験合格者数の目標も撤回されることになり、法曹を目指す人に厳しい現実が立ちはだかる。地方の法科大学院関係者からは「切り捨て」を懸念する声が上がり、学生からは将来への不安が漏れる。
「司法試験合格率が著しく低迷し、入学者が定員を大きく下回っている」「教育力に比べて定員が過大だ」。中間提言は、一部の法科大学院の現状を強い調子で批判し、統廃合を促した。04年度以降に開校した法科大学院は74校(現在は73校が存続)と想定以上に乱立し、学校間の大きな格差が問題化。文部科学省は今年度から、合格率や入学倍率が一定の基準に満たない学校に対する補助金削減に乗り出し、中間提言も強化を求めた。
こうした方向性に、地方や社会人専門の法科大学院は危機感を強める。今年度、国立で唯一、補助金削減の対象となった山陰法科大学院(松江市)の朝田良作・研究科長は「中間提言は、地方における法科大学院の適正配置を重視する視点が後退している。地域に根ざした法律家の養成も、法科大学院制度の理念の一つだったはずだ」と話した。
国立で唯一、社会人対象の夜間開講に特化している筑波大法科大学院(東京都文京区)の大塚章男・法曹専攻長は「夜間や土日しか学べない社会人は勉強時間にハンディキャップがある。合格率だけを基準に統廃合を進めれば、社会人の法曹への道を狭めることになりかねない」と訴えた。
「年間3000人合格」という司法制度改革の看板政策の一つが下ろされる背景にある新人弁護士の就職難も解消されず、学生の不安は広がる。
早稲田大法科大学院3年、小内克浩さん(28)は「いきなり1人で弁護士をするのは無理。法律事務所に就職できるか心配」という。中間提言は弁護士の活動領域を広げていくとしたが、小内さんは「実際にどう広げるのか実現見通しのあるビジョンを示してほしい」と注文した。
東京大法科大学院3年、依田俊一さん(25)は「年配の弁護士が既得権益を固守し、若者が割を食っている。弁護士会が閉鎖的な体質を改め、より積極的に活動領域を開拓すべきだ」と要望した。
参照:毎日新聞
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