2014年6月23日月曜日

なぜ芸能人の写真を撮るのは問題なのか?

歌舞伎俳優の市川海老蔵さんや、歌手のきゃりーぱみゅぱみゅさんが、プライベートの場で一般人から無断で写真を撮られたことに「悲しい」と相次いで苦言を呈し、ネット上で話題になっている。スマホやデジカメの普及で、写真を撮って世間に公開する行為が誰にでもできるようになり、罪の意識が乏しいファンは少なくない。なぜ芸能人の写真を撮るのは問題なのか?まとめた。

 今回の騒動では、一般人の反応は真っ二つに分かれる。「勝手に撮るなんて常識はずれだ」と芸能人を擁護する意見の一方で、「人前に出る仕事だからガマンせよ」「芸能人だから撮られて当然」という声もかなり目立つ。誰でも、憧れのスターが目の前に現れたら、興奮して一挙手一投足に注目したくなるのは仕方ないだろう。しかし、こと写真の撮影に関しては、節度が必要だ。なぜなら、裁判所の判例などで「肖像権」という権利が認められているからだ。

■マナーの問題ではなく法的な権利

この肖像権には、二つの側面がある。一つは、プライバシーの問題。これは芸能人に限らず、すべての一般人にも当てはまる権利だ。常識的に考えれば、何の断りもなく他人の写真を撮ることは「失礼」だと分かるはず。自分の身に当てはめれば、いきなり写真を撮られてネットにアップされれば、怒らない人はいないだろう。が、これはマナーの問題にとどまらず、法的な「権利」なのだ。

「でも、芸能人は私と違う。自ら進んでテレビとか出ているから撮られても仕方ないでしょ?」という声がある。しかし、顔(肖像)を売って仕事をしているからこそ、芸能人に認められている権利がある。それが「パブリシティ権」だ。

芸能人など著名な人は、活動を通じて多くのファンを獲得し、注目を集めることで経済的な利益を得ている。平たく言えば、自分の顔そのものを商品として稼いでいるということ。となると、一般人が芸能人を勝手に撮影するということは、経済的に価値のある「商品を盗んでいる」行為に当てはまるわけだ。

パブリシティ権は、1991年に東京高等裁判所が認定した「おニャン子クラブ事件」判決、2012年に最高裁判所が出した「ピンクレディー事件」判決など、いくつもの判例で承認されている。たとえツイッターといえども、全世界に発信できる「メディア」であることに変わりはない。一般人がネットにアップした芸能人の写真が複製されたりして、その芸能人の経済的な利益を損なう可能性はある。

実際、「生写真」などとして勝手に撮られた無許可の商品がはびこっている。肖像パブリシティ権擁護監視機構のサイトによると、こうした無許諾商品の年間小売り総額は100億円を超えるというから、その被害は相当なものだ。

■隠し撮りは「迷惑行為防止条例」に

なお、隠し撮り、いわゆる「盗撮」は、少し性格が異なる。こちらは肖像権の侵害以外にも、それぞれの地域の都道府県が定める「迷惑行為防止条例」の違反に当たることになるそうだ。

日本大通り法律事務所(横浜市)の喜多英博弁護士は「昔から著名人のプライバシーについては議論がありましたが、2005年には個人情報保護法が施行され、プライバシー権の意識はますます高まっています。無許可での撮影やSNSへのアップは控えるべきでしょう」と話している。
参照:THE PAGE

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