中学生にいじめ被害の深刻さやいじめを防ぐためにできることを考えてもらう授業づくりに、県内の若手弁護士が取り組んでいる。いじめ事件では立場上「対立」することが多かった学校と協力し、事態が深刻化する前にいじめを防ぐことが狙い。6月には教員ら学校関係者と意見交換を行って内容の充実を図るなど、来年度からの本格実施を目指して準備を進めている。
「同級生をいじめる寄せ書きが回ってきたら、あなたならどうしますか」
6月に横浜市内で行われたいじめがテーマの「模擬授業」。「葬式ごっこ」と称したいじめを受け、男子生徒が自殺に追い込まれた実際の事件を題材に、先生役を弁護士が、生徒役を教員ら学校関係者が務めた。対話形式の授業では、気軽にやったことでも相手を大きく傷つけてしまうことや、いじめの傍観者にもできることがあることが解説された。
意見交換も実施し、「エスカレートする前に、何ができたかも考えさせてほしい」「いじめの中には犯罪行為に当たるものもあり、法的責任を伝えてもいいのでは」など、学校関係者側からさまざまな提案があった。終了後のアンケートでも「具体的事例に基づいた授業は伝わりやすい」と評価する声や、「インターネットを使った現代のいじめも扱って」などの要望が寄せられた。
授業を企画したのは、新規登録から3~5年目を中心とした県内の若手弁護士有志。従来の弁護士活動では、いじめへの対応が「事後的」にならざるを得ず、「必ずしもいじめそのものの解決につながっていない」と限界を感じていたことがきっかけだ。
例えば、いじめを受けた生徒側の代理人として弁護士が関わるころには、子どもの心は傷つき、親は学校への不満を募らせるなど事態が深刻化してしまっているケースが多いという。学校側や加害生徒側とは事実調査などをめぐって対立し、解決は過去のいじめに対して金銭的な補償を目指すのが中心にならざるを得ない。
授業を企画した真船裕之弁護士(29)は「生徒が傷つく前に、弁護士も学校と協力していじめを防いだり、被害を最小限に食い止めたりする必要がある」と狙いを話す。
授業内容は、同様の取り組みを行っている東京3弁護士会を参考に考案。今後、寄せられた意見も踏まえて内容をさらに見直し、今冬に生徒向けに授業を実施する。来年度から要望があった県内の中学校に弁護士を派遣し、本格的に展開する予定だ。
模擬授業で先生役を務めた中山志歩弁護士(26)は「人権を守ることが弁護士の仕事。いじめは重大な人権侵害と伝えるとともに、悩みの相談先として、弁護士という存在がいることを知ってもらえれば」と意気込む。
授業の問い合わせは、おかもと総合法律事務所電話0466(54)9560。
参照:神奈川新聞
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