競馬の所得を申告せず、3年で約5億7000万円を脱税したとして、所得税法違反の罪に問われた元会社員の男(39)=大阪市=の判決が23日、大阪地裁であった。西田真基裁判長は大量の馬券を自動的に繰り返し購入した場合、競馬の所得は「雑所得」に当たり、全ての外れ馬券の購入費が経費になるという初の司法判断を示した。無申告の違法性は認め、懲役2月、執行猶予2年(求刑・懲役1年)の有罪としたが、脱税額を約5000万円に大幅減額した。
判決は馬券の所得を一般的に「一時所得」とした上で、「元会社員は多数、多額、機械的、網羅的に馬券を購入しており、雑所得に当たる」と認定した。
判決によると、元会社員は市販の競馬予想ソフトを改良した独自のシステムを構築。専用口座を開いて、インターネットでほぼ全レースの馬券を自動的に購入していた。2007年からの3年で購入した馬券は計約28億7000万円分で、計約30億1000万円の払戻金を得た。収支は計約1億4000万円の黒字だった。
検察側は競馬の所得は一時所得であり、当たり馬券の購入費約1億3000万円だけが経費として控除できると主張、元会社員の3年間の所得を計約29億円と主張していた。
判決はまず、「馬券の払戻金は偶発的、偶然に入り、継続性は認められず、一時所得に当たる」とした。しかし、「元会社員は無差別に一定の条件で網羅的に購入し、多額の利益を得ていた。元会社員は娯楽ではなく、資産運用の一種ととらえていた」と指摘、外国為替証拠金取引(FX)などと同じ雑所得に分類した。
そして、払戻金から全ての馬券の購入費を経費として差し引いた、実際のもうけである約1億4000万円を競馬の所得と結論付けた。
弁護側は「継続的な馬券購入によるFXで得た利益などと同様の雑所得に当たる。外れ馬券の購入費も経費となり、課税処分は無効」と無罪を訴えていた。
元会社員を税務調査した大阪国税局が告発、地検が11年2月に在宅起訴した。起訴分や無申告加算税を含めた追徴税額(05~09年)は計約10億円。元会社員は「一生かかっても完済できない」として、課税処分の取り消しを求める訴えを大阪地裁に起こしている。
◇雑所得と一時所得
雑所得は給与、配当、利子などの各種所得に該当しない個人の収入。必要経費を控除した金額に課税される。国税庁によると、FXや先物取引の利益、公的年金、作家以外の人が受け取る原稿料など。一方、一時所得は仕事の報酬などを除いて臨時、偶発的に受け取る収入。所得を得るために直接かかった費用だけが経費として認められる。国税庁は競馬などの公営ギャンブルの払戻金、懸賞や福引の賞金などを含めている。売り上げの一部が自治体に納められる宝くじやサッカーくじの当選金は非課税となっている。
参照:毎日新聞
0 件のコメント:
コメントを投稿