夫婦別姓を認めない民法の規定は憲法違反だとして、別姓を続けるため事実婚をしている夫婦ら5人が国に計600万円の賠償を求めた訴訟の判決で、東京地裁は29日、原告側の請求を棄却した。石栗(いしぐり)正子裁判長は「夫婦の双方が結婚前の姓を名乗る権利が憲法上保障されているとはいえない」と述べた。夫婦別姓を巡る国家賠償訴訟の司法判断は初めて。
原告側は「夫婦は結婚の際に夫か妻の姓を名乗る」とした民法750条の規定が、個人の尊厳や両性の平等を保障した憲法の規定に違反すると主張。1996年に法制審議会(法相の諮問機関)が「選択的夫婦別姓制度」の導入を答申したにもかかわらず法改正されていないのは「国会の怠慢」などと訴えた。
これに対し判決は、憲法の規定について「平等の原則を立法上の指針として示したもので、個々の国民に夫婦別姓を保障したものではない」と指摘。国会の責任も「選択的夫婦別姓制度の採用に対する期待が大きく、積極的に求める意見が多いという社会情勢にあるからといって、直ちに立法の義務を負うとは言えない」と退けた。
訴えていたのは、婚姻届を提出後も日常生活で旧姓を使っている富山市の元高校教諭、塚本協子さん(77)ら女性3人と、事実婚をしている東京都荒川区の会社員、渡辺二夫(つぐお)さん(45)とフリーライター、加山恵美さん(41)夫妻。1人100万~150万円の慰謝料を求め、2011年2月に提訴した。
◇原告は控訴の方針
原告は判決後、東京都内で記者会見し「世の中の価値観は変わっていくもの。今の情勢に合わせて判決を出してほしかった」と不満をあらわにし、控訴の方針を明らかにした。
「どうして結婚したら相手の名前にしなければならないのか。私の名前はどこへ行ったのか」。塚本協子さん(77)は訴えが退けられた悔しさをにじませた。「(塚本姓は)父親の大切な名前。(別姓を名乗る)喪失感がどうしようもなく苦しい」と吐露した。
旧姓を通称名として使うことに限界を感じて「ペーパー離婚」し、事実婚状態になっている加山恵美さん(41)は「負けちゃいました。でもまだ終わりません」とさばさばした表情で語り、今後も選択的夫婦別姓制度の実現を求めていく考えを示した。
参照:毎日新聞
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