2014年2月25日火曜日

名誉毀損でデヴィ夫人も…相次ぐネットの書き込みめぐる訴訟

 「ネットの情報を吟味せずに写真などをブログに転載しており、非常に軽率」

 神戸地裁は18日、タレントのデヴィ夫人のブログの内容が名誉毀損(きそん)にあたるとして、デヴィ夫人に慰謝料など165万円の支払いを命じた。そのブログの内容は、大津市の中学2年の男子生徒が自殺した問題に絡み、インターネット上の情報を基に、無関係の女性が加害者とされる少年の母親であるかのように表現したというもの。デヴィ夫人のブログはこの掲載で、それまで1日数万件だったアクセス数が1日200万~780万件に跳ね上がったといい、専門家は「ネット上で情報が爆発的に拡散する怖さを認識させる判決。ネットで情報を発信する際は、リスクを認識して真実かどうか確認する必要性を改めて感じさせている」と話している。

■突然、いじめ問題“関係者”に

 原告で50代の女性スタイリストの元に、同業仲間からこんな電話がかかってきた。

 「デヴィ夫人のブログに、顔写真が掲載されている」

 女性はすぐに知人に頼んで、ネットで検索してもらい、ブログを確認した。

 そのブログの記事は、平成23年10月に自殺した大津市立中学2年の男子生徒=当時(13)=が、学校側のアンケートでいじめを受けていたことが発覚した後の24年7月10日に掲載。大津市のいじめ問題の詳細について加害者とされる少年の写真とともに紹介していた。

 そこには、原告の女性が写っている画像とともに「とんでもないのが母親の××××(加害者とされる少年の名字と原告の名前が記載)。××××自身も『冗談を真に受けて自殺するなんて、こっちが被害者だわ』などとふざけた発言をしています」などと書かれていた。

 その後、女性が知人から状況を心配する電話を受けたり、勤め先に事実関係の問い合わせが来たりした。耐えかねた女性は同8月3日、謝罪文の掲載や慰謝料を求め、訴訟を起こした。

■“踊る”不確定情報

 女性は大津市のいじめ問題とは無関係の人物だった。それにも関わらず、なぜ一連の騒動に巻き込まれたのだろうか。

 判決によると、問題の写真は、加害者とされる少年の親族と女性が共通の知人と再会した際に撮影された。この知人は23年2月、ブログに加害者とされる少年の親族と女性の名前を記載して、写真を掲載。再会を喜ぶごくありふれたブログの記事だった。

 事態が急変したのはいじめ問題が発覚した24年7月初旬。同月7日、ネット上の掲示板などで、写真の男性が加害者とされる少年の親族とみられるとしてこの写真が転載されると、翌8日には、別のブログサイトで、写真とともに加害者とされる少年の母親が、この女性とする記事が掲載された。そして、同10日には、デヴィ夫人のブログにも取り上げられた。

■ブログで名誉毀損を認定

 女性側は裁判で、ブログを普通に読めば、写真の女性が母親だと勘違いすると主張。掲載前は1日数万件だったデヴィ夫人のブログのアクセス数は1日200万~780万件に急増しており、社会的評価を著しく低下させ名誉毀損に当たると指摘した。

 一方、デヴィ夫人側は、写真の女性が母親であると述べていない▽加害者とされる少年の親族の写真を掲載する趣旨で掲載し、女性が加害者とされる少年の母親と言及する意図はない-などと反論した。神戸地裁が和解を持ちかけたが成立せず、司法の判断に委ねられることとなった。

 そして迎えた2月17日の神戸地裁判決。工藤涼二裁判長はブログの内容について「著名な芸能人が開設したもので、かつ、記事の内容は社会的耳目を集めた事件に関連するものだった」として、記事が相当多数の読者に閲覧されたと認定した。そして、「ネット上の情報を十分吟味せずに発信し、非常に軽率な行為」と非難した。

  また、「普通の読み方をすれば、女性が加害者とされる少年の母親であると誤信させる可能性が高い」と判断。社会的評価を低下させ、精神的苦痛を与えたとして慰謝料の支払いを命じた。一方で謝罪文の掲載については、すでに記事の訂正がされているなどとして、退けた。

■相次ぐネットの書き込みめぐる訴訟

 ネット上の名誉毀損問題に詳しい深町周輔弁護士(東京弁護士会)は判決について「妥当な判断で、ネット上で情報が爆発的に拡散する怖さを改めて認識させる内容」と評価し、「誰もが被害者や加害者になり得る。ネット上で情報を発信するリスクを認識する必要がある」と指摘する。

 実際にブログなどで誤った情報を記載し、名誉毀損で裁判沙汰になるケースは少なくない。

 今回の訴訟以外にも大津市のいじめ問題では、加害者とされる少年の祖父だとブログに書き込まれたとして、滋賀県栗東市の病院職員の男性が、書き込んだ男性を相手取り、165万円の損害賠償を求める訴訟を起こしている。

 また、ネット掲示板「2ちゃんねる」に、「技術が低い」などとする中傷を書き込まれた医師が、書き込んだ美容外科医に損害賠償を求めた訴訟では、大阪地裁が24年7月、慰謝料110万円の支払いを命じている。

 深町弁護士はネット上のトラブルをめぐる相談件数は年々増えているといい、「ネット上には不確かな情報も多い。情報を発信する際は、一般人でも情報の発信力を意識して、しっかり事実関係を確認した上で書き込まないと同様の事件は起きる」と警鐘を鳴らしている。

参照:産経新聞

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