2014年4月22日火曜日

意見分かれる「代理出産」問題 どんな議論があるのか

 自民党が「代理出産」をめぐって真っ二つになっています。同党のプロジェクトチームが不妊症の夫婦に対する生命補助医療の法整備を検討しているのですが、代理出産については党内で賛否が分かれ、意見集約を見送ることになったのです。プロジェクトチームは代理出産を限定的に認める案や全面的に禁止する案など、複数の法案を議員立法で秋の臨時国会に提出、その可否を国会審議に委ねることになりました。なぜいま代理出産が議論になっているのでしょうか。そこにはどんな経緯や問題点があるのでしょうか。

  「代理出産」とは、子どもを望む女性が自分以外の女性(代理母)に妊娠・出産してもらうことです。不妊治療がうまくいかなかったり、子宮がんで子宮が摘出された場合などに活用され、出産後は子どもを引き渡してもらうことになっています。過去にはタレントの向井亜紀・高田延彦さん夫妻のケースなどで話題になりました。

法律をめぐる議論
 代理出産が議論になるのは、ひとつに法律の解釈上の問題があります。そもそも日本には代理出産に関する法律がありません。法律上、代理出産は禁止も許可もされていないのです。民法ができたのは100年以上前、明治時代のことで、当時は高度な生殖補助医療もDNA鑑定もありませんでした。そのため最高裁は1962年、母と子の関係は「分娩の事実により発生」、つまり出産という事実によって成立するとの判断を示しています。民法は生殖補助医療を使った出産を想定していなく、ずっと子どもを妊娠・出産した女性を「母」とすることが前提となっていたのです。最高裁は2007年にも、代理出産による子どもを実子とする届け出を認めない判決を出しました。
 
倫理をめぐる議論
 さらに、代理出産には倫理をめぐる議論もあります。日本医師会は倫理上の観点から基本的に代理出産を容認していません。厚生労働省・厚生科学審議会生殖補助医療部会も2003年、代理出産は「人を生殖の手段として扱うものであり、子どもの福祉の点からも望ましくない」などの理由から禁止すべきだと報告しています。
 
代理出産を許容する国も
 しかし、海外には米国やインドをはじめ、代理出産が許容され、数多く実施されている国があります。日本では90年代初めから海外での代理出産を斡旋する業者が現れるようになり、こうした国での代理出産を仲介しています。インドなどでは貧困層が代理母を引き受けて大きな問題になっていますが、業者を介して海外の代理出産で子どもを得た日本人夫婦は100組を超えるともいわれます。

 医療技術が進歩した結果、妊娠・出産、誰を「母」と認めるかなど、日本の民法が想定していない事態が生じているわけです。こうした状況が今後も続くと考えられる以上、代理出産をどう取り扱うか、国会で議論してきちんと法律を整えるのは当然のこと。むしろ、もっと早く法制化の議論をすべきだったとの見方もあります。
 
リスクやトラブルの可能性
 ただし、代理出産はそう簡単に結論が出る議論ではないうえ、さまざまなリスクやトラブルも考えられます。たとえば、代理母を引き受ける女性は自分のお腹を痛めて出産するため、生まれた子に情が移り、引渡しを拒否するケースです。実際、米国ではこの問題が深刻化しています。逆に、生まれた子に障害があったり、愛情が持てなかった場合、依頼した女性が引き取りを拒否するケースもあるといわれます。その一方、代理出産を望む多くの夫婦、カップルがいるのも事実です。そのため、自民党総務会長の野田聖子議員が自身の不妊治療体験から積極的に賛成する一方、河野太郎議員はブログで反対を表明するなど、自民党内でもさまざまな意見が出ているのです。

 医学や倫理上の問題をはじめ、子どもの福祉、代理母の問題、ルールやガイドラインの明確化など、代理出産には検討すべき課題がたくさんあります。この問題が今後どのように議論されていくのか、きちんと見守る必要があるでしょう。
 
参照:THE PAGE

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