「’15年1月から発生する相続について、相続税が増税されるため、関心が高まっています。今後は『争続』をふくむ相続全体に注目が集まり、争いが増えそうです」
そう警鐘を鳴らすのは、弁護士の長谷川裕雅さん。亡くなった肉親の財産をめぐり、相続人たちが争うことは、「争続」などと揶揄されている。しかし、この争続、セレブよりごく普通の家庭で起きるケースのほうが、圧倒的に多いという。
「裁判所が出している司法統計年報によると、遺産5千万円以下の相続争いの数は、5千万円以上の3倍」とのこと。そこで、相続でモメるポイントを長谷川弁護士に教えてもらった。
《「分けられない財産」でモメる!》
一般家庭に多いのが「財産は自宅の不動産だけ」というケース。均等に分けるのが難しいため、火種になりやすい。背景には、日本人特有の“土地神話”があるという。この不動産を相続人で分けるにはおもに「現物分割」「換価分割」「代償分割」の3つの方法がある。
「現物分割とは、自宅は長男に、投資用マンションは次男に……と、財産をそのままの姿で相続する方法。換価分割とは、不動産を売ってお金に変え(換価)、相続人で分配すること。代償分割とは、特定の相続人が不動産を相続する代わり、ほかの相続人に相当の代償金をはらうことです」
だが、話がまとまらず、よくとられるのが、不動産を複数の人で共有する方法だ。長谷川弁護士は「これは極力、避けるべき!」という。
「共有者に相続が発生したら、ねずみ算的に相続できる人間が増え、意見がまとまることはまずありえません。結果、永遠に売れない財産になってしまい、固定資産税だけを払い続ける羽目になるのです」
《生前「親にしてもらったこと」でモメる!》
生前、親から援助してもらったおカネも、争続の原因に。ここで関係してくるのが「特別受益の持ち戻し」という制度だ。これは親が生きているうちにもらった財産についても、相続のときに考慮しましょうという制度。「特別受益」とみなされれば、その額は相続できる財産と相殺(持ち戻し)される。条件は2つ。被相続人から相続人に与えられた財産であることと、それが生計の資本になるおカネだったということだ。
「つまり、息子の嫁に生前、おカネをあげたとしても、相続人ではないので特別受益に当たりません。また、もらったおカネを生活費として使ってしまうと、特別受益として相続時に持ち戻しの対象になるという点に注意を。違和感があると思いますが、マイホーム購入資金や失業中の生活費が特別受益にあたる一方で、海外旅行やぜいたく品の購入などは、特別受益にはならないのです」
《生前「親にしてあげたこと」でモメる!》
介護などで、ほかの相続人以上に被相続人の面倒を見てきた、と主張する人もいるはず。ここで焦点になるのが「寄与分」だ。
「寄与分とは、親の事業を手伝うなど、財産の維持や増加に特別な貢献をした場合、ほかの相続人より多く遺産を受け取れる、というもの。しかし、親に対する介護は当然の貢献とみなされ、特別な犠牲を払って初めて、考慮されるかもしれないという程度です」
また、寄与分を主張できるのは相続人のみ。長男の嫁が懸命に介護しても、主張さえできない。そこで、重要になってくるのが遺書だ。
「優しく世話をしてくれたお嫁さんや、籍は入れなかったものの、晩年をともに過ごしたパートナーに遺産を譲りたい場合などは、その意志を遺書に残すことになります。遺書の内容は、相続人同士で行われる遺産の分割協議の内容より、優先されます」
書店やネットに、遺書のマニュアルは出回っているので、参考に。
しかし、骨肉の争いは避けたいもの。「うちは大丈夫」と思う前に一度、確認を!
参照:女性自身
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