2014年11月11日火曜日

裁判官の過労が及ぼす、裁判の質の低下はないのだろうか

 10月23日、名古屋家裁岡崎支部(愛知県岡崎市)の男性裁判官が同日午前中に予定されていた審判に寝坊して間に合わず、期日が取り消された。その男性裁判官は、午前8時頃に一度目を覚ましたもののもう一度寝てしまい、期日に間に合わなかったという。

  このような事件の背景に、裁判官の過労が挙げられる。1999年に開始された司法改革の一環として2006年から新司法試験が実施され、司法試験合格者が2000人前後にまで増加した。その結果、13年時の弁護士の人数は、1999年時の人数と比べて2倍以上になった。しかし、2013年時の裁判官の人数は、1999年時の人数と比べて約1.4倍程度しか増えていない。

 海外と比べても日本の裁判官の人数は圧倒的に少ない。裁判官一人当たりの国民の人数を比較すると、日本では、約4万6000人程度であるのに比べて、イギリスは約1万4000人である。ドイツに至っては、約4000人であり、日本の10倍以上になる。そのため、司法改革に伴い訴訟が増加した現在では、裁判官が、慢性的な過労状態にあるのは明らかである。

 裁判官の業務は、事件の当事者の将来を左右するものであるから、裁判官の採用は慎重に行われるべきである。しかし、裁判官の採用を慎重に行った結果、人数不足になり、裁判官の業務の質そのものが低下してしまったら、元も子もない。

 裁判官の人数が増加しない原因として裁判所予算が不足していることが挙げられる。2014年度裁判所予算は、国家予算約95兆円のわずか0.32%の約3110億円である。

 裁判所予算のほとんどは裁判官、裁判所書記官の人件費といわれているから、裁判官の人数増大のためには裁判所予算を増やす必要がある。また、裁判官の質を維持したまま裁判官の人数を適度に増加させるために、積極的な弁護士任官の採用も視野に入れるべきである。実務に精通した弁護士であれば、処理できる仕事量という観点でも、非現実的な判断の回避という観点でも、裁判官の質の維持、向上に貢献できるはずだ。

 司法改革は、市民にとって身近で利用しやすく頼りがいのある司法であり、市民一人ひとりが尊重される基本的人権が保障される司法である「市民の司法」を実現するための改革である。その司法改革を完遂するためには、事件に関する適切な最終判断を下すことができる裁判官の人数が十分に必要であるから、裁判官の採用人数の増大は急務である。

参照:エコノミックニュース

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