日本では、役所に婚姻届けを出す際、夫か妻のどちらか一方の名字を選ぶ「夫婦同姓」が民法で定められている。しかし、名字の選択は「個人の自由」とする意見があり、民法を改正して、夫婦それぞれが名字を選べる「選択的夫婦別姓制度」にしようという議論が長年にわたって続いている。
内閣府が2012年12月に実施した世論調査によると、「選択的夫婦別姓制度」の導入について、「現在の法律を改める必要はない」とする回答が36.4%という結果だった。次いで、「法律を改正してもかまわない」が35.5%、「通称として使えるように法律を改める」が24%、「わからない」が4.1%だった。
最近では、結婚して戸籍上の名字が変わっても、仕事では旧姓を通称として利用する習慣が広がりつつある。しかし役所に提出する公文書では、依然として「夫婦同姓」を求められている。はたして、民法を改正して「夫婦別姓」を認めるべきなのか。
弁護士ドットコムに登録している弁護士に意見を聞いた。
●「選択的夫婦別姓」を支持する弁護士が多い
弁護士ドットコムでは、登録している弁護士に意見を求めた。4つの選択肢から回答を選んでもらったところ、45人の弁護士から回答が寄せられ、次のような結果となった。
(1)民法を改正して「選択的夫婦別姓」を認めるべき
→31人
(2)現行の民法を改正する必要はない
→7人
(3)通称として別の姓も使えるよう民法を改正すべき
→5人
(4)いずれでもない
→2人
このように、回答した弁護士の約7割にあたる31人が<民法を改正して「選択的夫婦別姓」を認めるべき>と答えた。いわゆる「選択的夫婦別姓」を支持する意見が多数を占める結果となったが、その理由として、次のような意見が見られた。
「たしかに、夫婦別姓は子どもの姓、相続問題等、不都合な問題もあろう。しかしながら、個人の尊厳に最高価値をおく現行憲法からすると、姓を自分のアイデインテイーとする人にも、配慮する必要があろう。そこで、選択的夫婦別姓を導入しても良いと考える。この制度を導入にしても、夫婦同姓でいたい、という人の意思は妨げられない。」(大和幸四郎弁護士)
「夫婦別姓制度というのは、何らかの選択を強制するものではなく、あくまで選択肢を増やすに過ぎません。希望者のみが別姓を実現することが出来るのですから、特段の不都合は無いと考えています。また、家族間の結びつきというものは、名字によって生じるものでもないでしょう。そのような形式的なものではなく、もっと実質的な部分によって家族間の結びつきが生まれるはずです。夫婦別姓制度は、時代に沿ったふさわしい制度であると考えています。」(中尾慎吾弁護士)
●「現行の民法を改正する必要はない」という意見も
一方、回答者の15%にあたる7人の弁護士が、<現行の民法を改正する必要はない>という意見を支持した。その理由は、次のようなものだ。
「夫婦別姓の最大の難点は子供の姓と父または母の姓とが異なってしまうというところにあります。子供と親との関係において父親と母親とで子供との距離が異なるのは好ましいことではありません。法律婚が事実婚と異なるのはこの夫婦同姓というところがポイントです。現状以上に法律婚を事実婚に近づけるのは適切であるとは思えません。」(中島繁樹弁護士)
また、<通称として別の姓も使えるよう民法を改正すべき>という回答は5人、<いずれでもない>という回答は2人から寄せられた。
今回の調査では、「選択的夫婦別姓」を支持する意見が圧倒的に多かったが、それは、「個人の尊厳」に至上価値をおく日本国憲法の精神のもと、夫婦のありかたが多様化する時代を反映しているのかもしれない。
だが、内閣府の世論調査でも、「選択的夫婦別姓」について賛成と反対が拮抗したように、まだ民意がしっかりと形成されていないようにも思われる。国民的な議論が深まるのはこれからだと言えるだろう。
参照:弁護士ドットコム
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