2013年2月15日金曜日

追い出し部屋、外資型解雇は増えるのか

 「追い出し部屋」が話題になっている。企業側が解雇対象者を「追い出し部屋」という部署に集め、職場に居場所がないことを伝え、出向先を探させたりしているというのだ。朝日新聞が昨年暮れに報じ、厚生労働省が実態調査に乗り出した。

 かつて旧国鉄が余剰人員を人材活用センターに集め、仕事を与えず解雇に追い込んで国会で問題化したことがあり、類似の手段は過去にも使われてきたが、労働問題に詳しい弁護士は「最近の余剰人員整理には相対評価による解雇といった米国流のドライなものが目立つ」と話す。

 相対評価による解雇とは、会社側が全社員を評価し、相対的に評価が低い下位の一定割合の社員を退職させるもの。リーマンショック後、日本の外資系企業で目立ち始めた。「たとえば1000人の企業だと下位1割の100人を退職させるといったやり方です」(同前)。

 これまでの日本の企業では、仕事をさぼったり、誰が見ても著しく能力が低い社員に研修や教育を施し、それでも改善されない場合、解雇もやむをえないというのが普通だった。つまり絶対評価による解雇である。

 「ところがここ数年は、外資系企業を中心に、相対評価の低い一定割合の社員を問答無用で退職させる企業が出てきた。相対評価の低い社員に“業績改善が必要だ”としてPIP(業績改善プログラム)を受けさせた揚げ句、改善の見通しがないという理由で退職に追い込むのです。ただ、過去の判例(セガ・エンタープライゼス裁判)では、解雇が正当なのは社員の能力が“平均的な水準に達していないというだけでは不十分で、著しく労働能力が劣り向上の見込みがない場合に限られる”とされています」(先の弁護士)

 PIPを課された後、解雇された元社員が解雇を不当として裁判で争うケースもいくつか起きている。米通信社ブルームバーグは、同社東京支局の記者にPIPに取り組むように命じ、記事本数の少なさや質の低さといった「能力不足」を理由に解雇した。だが昨年10月の東京地裁判決は「解雇理由に客観的な合理性はない」として解雇無効を言い渡した。

 また昨年10月、日本IBMを解雇された元社員が同様の訴訟を起こした。同社では昨年9月だけで200人が退職したとされる。世界的な不況の中、日本でもPIPと相対評価による解雇の増加が危惧されそうだ。
 
参照:プレジデント

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