バラエティ番組では、有名人の“悪口”が、笑いを誘うための“ネタ”として使われるケースがある。たとえば2012年10月、フジテレビ系で放送されたバラエティ番組内で行われた川柳企画で、元AKB48の前田敦子さんをお題に「AKB 抜けても顔は ○○○○○」と下の句が伏せられた穴埋めクイズが出題されたが、この正解答が「センターに」だった。
前田さんは以前よりネット上で、一部のユーザーから“顔面センター”などと揶揄されることがあったため、そうしたネット上の“ネタ”をバラエティ番組が取り上げたことになる。この番組に対しネット上では、視聴者の感想と思われる「体のパーツを馬鹿にするのは不快」「こういうのは大っぴらにやると悪意のある悪口になる」などの否定的な意見が数多く投稿された。
このように対象がタレントであった場合でも、本人は取り上げられたくないと思っていたことや、デリケートな問題を笑いのネタにされた場合、発言主や企画として取り上げた番組が名誉毀損の対象となることはないのだろうか。秋山亘弁護士に話を聞いた。
●すべての発言が、侮辱行為として違法性を帯びるわけではない
「他人の名誉感情を侵害する侮辱行為については、民法上の不法行為(民法709条)に該当し、損害賠償請求を受けることがあります。また、刑法においても、公然と他人を侮辱した場合に侮辱罪(刑法231条)として刑事責任に問われます。」
「しかし、他人を批判したり、冗談を言う行為の全てが侮辱行為として違法性を帯びるものではなく、『社会通念に照らして許容範囲を超える』と言える場合にのみ、侮辱行為として違法性を帯びるとされております。そのため、違法な侮辱行為と見なされるか否かの判断基準は微妙なものがあります。」
●容姿を馬鹿にする場合は、違法な侮辱行為と見なされる可能性が高い
「ただし本件のように、顔のパーツなど他人の容姿を取り上げて馬鹿にしたり、揶揄したりする行為については、正当な理由なく他人の人格を否定する行為として、違法な侮辱行為と見なされる可能性が高いと考えられます。」
「言った側にしてみれば軽い冗談のつもりであっても、言われた側にしてみれば深刻な侮辱行為として受け止められる可能性は十分にありますので、思わぬ紛争に発展しないよう十分な注意が必要です。」
容姿の不格好さを売りにしているお笑い芸人もいるため、そのような人の場合には仮に馬鹿にするような発言があったとしても違法性を問うことは難しいかもしれないが、そうではないタレントの場合には、発言内容によっては法的なトラブルに発展することもあるだろう。
いくらバラエティ番組で笑いをとるためとはいえ、視聴者がひいてしまうほどにタレントを馬鹿にする行為は、自重されるべきではないだろうか。
参照:弁護士ドットコム
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