「人の命を奪う極めて重大な刑。その重みを改めて感じた」。就任から約2カ月で3人の死刑執行を命じた谷垣禎一法相は、21日の会見で慎重に検討した上での判断だったことを強調した。死刑制度をめぐっては国内外からの反対意見も根強い。ただ、谷垣氏は「制度の大綱について現時点で見直す必要はないと考えている」と明言し、肯定的な姿勢を改めて示した。
■「内政上の問題…」
「死刑制度の賛成、反対があるのはよく承知しているが、犯罪抑止や被害者感情などさまざまな事情で存続してきた」。就任以降、執行に前向きな発言を続けてきた谷垣氏は、執行後の会見でもこう話した。
さらに、判決確定から6カ月以内に死刑を執行しなければならないとした刑事訴訟法の規定を挙げ、「法の精神を無視するわけにはいかない」と言及した。
日本が死刑制度を存続していることについては国連などから批判もある。しかし、谷垣氏は「死刑は極めて大きな内政上の問題。治安維持や国民感情という観点をしっかり考えるべきだ」との考えを示した。
政権交代前の民主党政権下では千葉景子氏が平成22年に執行して以降、短期間での法相交代が続いたことなどで執行が途絶え、23年は19年ぶりに「未執行年」となっていた。その後、小川敏夫氏が3人、滝実氏が4人を執行したものの、未執行の死刑確定囚が130人を超えるなど、過去最多ペースで推移していた。
■存廃論議は進まず
一方で、制度そのものの存廃論議は明確な方向性を打ち出せていない。
千葉氏は「国民的な議論の契機にしたい」と死刑の存廃を含めた制度の在り方を研究する勉強会を設置。東京拘置所内の刑場を初めて報道陣に公開し、情報開示も進めた。しかし、勉強会は昨年3月「存廃の結論を取りまとめることは相当ではない」との報告書を公表し、打ち切られている。
こうした状況での執行に慎重派の危機感は強い。
人権団体「アムネスティ・インターナショナル日本」は「死刑制度に固執し、執行を恒常化させようとする意思表示だ」とする抗議声明を発表。死刑制度の廃止についての全社会的議論を求めてきた日本弁護士連合会の山岸憲司会長も「真に慎重な検討がなされたのか大いに疑問」とする声明を出した。
一方、「全国犯罪被害者の会(あすの会)」の岡村勲顧問は「そもそも未執行者が130人超もいることが異常事態だった」と話す。常磐大学大学院の諸沢英道教授(被害者学)は「これまでは法相の個人的信条で死刑が執行されないなど、法的安定性を欠いていた」と指摘。「谷垣氏は今後も淡々と職責を執行するのではないか」としつつも「在任中に10人以上執行するケースはまれで、執行人数が急増することは考えづらい」とみている。
参照:産経新聞
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