2015年4月14日火曜日

削除請求-知る権利と忘れられる権利はどちらが強いか

■ネットの情報を簡単に消す方法
  ネット上に広がる事実無根の噂や知られたくない過去。それらに悩まされている人に朗報となる司法判断が出た。自分の名前で検索すると、犯罪にかかわったと記述する検索結果が表示されることに悩んでいた男性が、検索結果の削除を求める仮処分を申請。それを受けて、東京地裁は2014年10月、グーグルに対して削除命令を下したのだ。

  これまでもサイト管理者などのコンテンツプロバイダに対しては、人格権(プライバシーなど)を侵害する書き込みの削除が命じられてきた。しかし、グーグルなどの検索結果の表示に関しては、検索サービスの公益性などを理由に削除請求が退けられてきた。しかし、男性の代理人を務めた神田知宏弁護士は、次のように主張する。

 「検索サービス事業者側は、検索結果はロボットが自動的に収集したものだと主張してきました。しかし、ロボットに意思を与え、どこにどう表示させるのかを決めているのは検索サービス事業者。検索表示はコンテンツの1つであり、他のコンテンツプロバイダと区別して特別扱いする理由はない」

 今回、グーグルに削除命令が出た意義は大きい。削除仮処分申請の供託金は、東京地裁で1件30万円。その他に弁護士費用もかかる。これまではサイトごとに削除申請するのが一般的だったが、件数が多いと金銭的な負担も膨らむ。しかし、グーグルの検索結果から削除できれば、自分に関する知られたくない情報へのアクセスを困難にできる。元の情報は消えないが、グーグル相手に1回削除申請するだけで済むから簡単だ。
       
■日本は米国より欧州に近い? 

 男性側の主張が認められた背景の1つとして注目されているのが、「忘れられる権利」だ。これは、個人データ管理者に消費者がデータの削除を求めることができる権利で、2012年にEUのデータ保護規則案で明文化された。日本の削除請求で使われる人格権侵害よりも広い概念だ。今年5月には、自身に関する記事の検索表示削除を求めたスペイン人男性に対して、EU司法裁判所が「忘れられる権利」を認め、グーグルに削除を命じている。

 忘れられる権利をめぐっては地域で温度差がある。欧州では前述の判決を受けてグーグルに削除要請が殺到したが、アメリカでは表現の自由や知る権利が伝統的に重視され、忘れられる権利への関心は低い。では、日本はどうか。

 「日本人のメンタリティーは欧州に近いと思う。グーグルのストリートビューを見ても、自分の家の画像を削除申請した人がいて、ところどころ見えなくなっています。プライバシーには敏感な国民性です」(神田弁護士)

 日本でもグーグルに削除要請が殺到する日は遠くないだろう。グーグルは今回の仮処分に従う方針を表明したが、今後の対応に引き続き注目したい。
 
参照:プレジデント

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