2012年10月19日金曜日

司法試験3度目で 4児の母、合格 亡き夫の遺志受け継ぎ

 「司法試験を受けてみないか」-。裁判官だった亡き夫が闘病中に語った言葉をきっかけに、4人の子供を育てる廿日市市前空の主婦、佃祐世(つくだ・さちよ)さん(40)が、難関の司法試験に3度目の挑戦で見事に合格した。「地域に根ざした身近な弁護士になりたい」と、11月から司法修習生として法の世界に飛び込む。


 祐世さんの夫、浩介さんは福岡県や愛知県で裁判官を務めた後、広島法務局に勤務していた。子宝に恵まれ、祐世さんは家事と育児に追われる毎日だった。

 ところが、平成18年7月、浩介さんが脳腫瘍で突然倒れ、翌年3月に35歳で死去。4人目の子供(次女)が20日前に生まれたばかり。「どうやって生きていたかわからなかった」と途方に暮れる日々が過ぎた。

 49日の法要の日。幼い子供たちの無邪気な姿を見て「このままじゃいけない」と考え夫の闘病生活中に交わした何気ない会話を思いだした。夫は家族の将来を考え「司法試験を受けて弁護士にならないか」と祐世さんに語りかけていたのだ。

 祐世さんは司法試験の挑戦を決意した。生後2カ月の乳児から小学生まで4人の子供を育てつつ、猛勉強を始めた。法科大学院の受験に向け、授乳しながら問題集を開いた。「勉強していると、夫に見守ってもらいながら、夫の跡を追えている気がした」。苦ではなかったと話す。

 法科大学院に合格し、2年後に卒業したが、最初の司法試験は「惨敗だった」。自信をもって臨んだ2度目の試験も落ちた。

 制度上、試験が受けられるのは3度まで。「こうなったらひたすら勉強しよう」と実家の両親や「ママ友」に子供たちの習い事の送り迎えや放課後の面倒を見てもらい、1日8時間の勉強時間をやりくりした。

 今年9月の合格発表は「不安で見に行けなかった」という祐世さん。ママ友に確認してもらい、吉報は子供が通うスイミングスクールで聞いた。帰宅後、浩介さんの仏壇に受験票を置き、「ありがとうございました」と報告した。

 祐世さんは「1人では無理だった。両親、ママ友、子供たちみんなの協力があったからこその合格」と感謝している。「お世話になった多くの人たちのためにも、地域に根ざした身近な存在の弁護士になりたい」と意気込みを語った。

参照:産経新聞

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