2014年5月14日水曜日

狙われる企業の頭脳 相次ぐ流出、遅れる日本の法整備

 再び一流企業の機密情報の流出が明らかになった。今年3月の東芝に続き日産でも流出が判明、企業情報が退職者らに盗み出されるケースが後を絶たない。専門家は「取り締まる法律は諸外国と比べて不十分な点があり、整備が必要だ」と指摘している。

  企業の情報流出問題をめぐっては、産業界から「技術流出で国際競争力が低下している」と規制強化を求める声が上がり、平成15年に不正競争防止法が改正され、営業秘密が漏洩(ろうえい)した場合に刑事罰が導入された。

 ただ、営業秘密を盗み出した元社員がライバル企業に利益を生み出す情報を提供するなど、加害者の「悪意のある動機」を立証する必要があり、立件のハードルは高かった。

 21年に再度、法改正され営業秘密を無断でコピーしたり社外に持ち出す行為に対し罰則が規定された。今回の日産元社員の事件の場合、法改正前では取得の目的や開示した形跡の証明が必要で立件は困難だったとみられる。

 諸外国の法律では情報漏洩は厳罰化が進んでいる。国内法では秘密漏洩は個人の罰則は懲役10年以下または罰金1千万円以下、企業側の罰則は3億円以下の罰金。流出先が海外でも罰則は変わらない。米国では個人の懲役は10年以下で日本と同じだが、罰金に上限はなく海外への流出はより重罰化となる。ドイツや韓国も海外流出は懲役の上限が長くなる。米国や韓国では捜査当局の独自捜査が可能だが、日本では被害企業側からの告訴が捜査の条件。被害企業は情報管理の甘さへの批判を恐れ、告訴をためらうケースも多い。

 経済産業省が24年に約1万社に技術流出の実態を調べたアンケートでは、過去5年間で「営業秘密の漏洩」や「可能性がある事例があった」と回答した企業が約15%に上った。

 日本知的財産協会の久慈直登専務理事は「被害企業からの告訴がなくても、捜査機関が独自に捜査できるよう法整備だけでなく、罰則の強化が必要。事件防止には営業秘密の取得が犯罪だという社員教育を徹底すべきだ」と話している。

参照:産経新聞

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