◇「主張が分かりにくい」で、弁護士の技術や意識の向上狙う
刑事裁判を専門とする弁護士グループが、「東京法廷技術アカデミー」を設立し、弁護士向けのスキルアップ講座で後進の育成に力を注いでいる。裁判員裁判で、検察に比べて「主張が分かりにくい」と評価されてきた弁護士の技術や意識の向上が不可欠だからだ。アカデミーを率いる高野隆弁護士(57)は「腕を磨いた弁護士の増加が、制度の定着につながる」と期待する。
4月下旬、立命館大法科大学院(京都市)の法廷教室。受講生の弁護士7人が検察と弁護側に分かれ、傷害致死事件の模擬裁判に臨んだ。
「死亡した被害者には『視床出血』があったのでしょうか」。弁護人役が、証人の医師役に死因を尋ねた。講師から「専門家への尋問では、必ず用語の解説をしてもらうように」と注意が飛ぶ。「裁判員へのサービスを考えて」「尋問に緩急を付けて」など、その後も次々と助言が加えられた。
講座のスタッフは刑事弁護に精通する弁護士たち。5日間のプログラムで受講料は25万円。受講生は書面を一切手にせず、冒頭陳述から最終弁論まで、一連の手続きを実演形式で取り組む。宮崎県から参加した五嶋俊信弁護士(44)は「裁判員裁判を3回経験したが、書面を読み上げても裁判員に考えが伝わったのか自信がなかった。トップレベルを学べて勉強になった」と話した。
日本弁護士連合会は2006年から、各地の弁護士会に講師の弁護士を派遣し、法廷技術を学ぶ研修を実施。昨年度も17弁護士会で20回行った。だが、最高裁が昨年度に実施した裁判員経験者アンケートでは、検察官の説明を「分かりやすかった」と回答した経験者が68%だったのに、弁護士については36%にとどまった。制度開始以来、この傾向は変わらない。
高野弁護士も日弁連の講師として全国を回ったが、1回2日程度の研修には限界も感じ、昨年8月にアカデミーを設立した。「短期間で裁判員に主張を理解してもらう必要があり、書面中心の刑事裁判は終わりを告げた。アカデミーで学んだ弁護士に、各地で率先して裁判員裁判に取り組んでほしい」と力を込めた。
参照:毎日新聞
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