少年の法定刑の引き上げなど少年法の改正案を検討している法制審議会(法相の諮問機関)少年法部会は28日、有期刑の上限を5年引き上げる一方で、国費で少年に弁護士を付けられる「国選付添人制度」の適用範囲を拡大する要綱案をまとめた。2月上旬の法制審総会で要綱とし、法相に答申する。
現行法は、犯行時18歳未満の加害少年に無期刑を言い渡す場合、有期刑に緩和し「10~15年」の範囲で言い渡せると定めるが、要綱案では「10~20年」と上限を引き上げ、仮釈放の条件も「3年経過後」を「刑の3分の1経過後」と改めた。
また、現行法は、判決時20歳未満の少年に3年以上の有期刑を言い渡す場合は刑に幅を持たせた不定期とし「長期は10年、短期は5年」を超えられないと規定しているが、要綱案では「長期は15年、短期は10年」に引き上げた。長期と短期の間が広がりすぎないよう、短期の下限も設けた。
一方で、現在は殺人、強盗など重大事件に限られている国選付添人制度と検察官が審判に出席して意見を述べられる「検察官関与制度」について、要綱案は弁護士(付添人)と検察官のいずれも窃盗など軽い罪でも審判に関われるようにするとした。
◇被害者遺族「理不尽な状況から一歩前進」
現行制度では成人の有期刑の上限は単一の罪では20年で、複数の罪では併合罪で30年となる。一方、少年の場合は複数の罪の併合罪でも現在は10年が上限。同級生が共犯で事件を起こしても19歳か20歳かで刑に20年の差が付く場合もあるため、少年事件の被害者遺族などから「刑罰に開きがありすぎる」との声が上がっていた。
大阪府富田林市で09年、高校1年の大久保光貴さん(当時15歳)が少年に殺害された事件の裁判員裁判の判決で大阪地裁堺支部は11年2月、少年に有期の上限の懲役5年以上10年以下の不定期刑を言い渡した。判決は「少年に(有期刑が)科される最も重い懲役10年でも十分とは言えない」と指摘し、「適正な(法)改正が望まれる」とした。
要綱案について、大久保さんの父巌さん(48)は「今までの理不尽な状況から一歩前進した」と一定の評価をした。一方で「加害者の年齢で刑罰に差があること自体に納得できない。高年齢の少年と成人がそんなに違うとは思えない」と吐露。「成人か少年かではなく、犯罪の内容に比例した刑罰を科すべきではないのか」と訴えた。
一方、日本弁護士連合会で少年法の問題を担当する事務次長の鈴木啓文(ひろぶみ)弁護士は「少年と成人の刑の重さを単純比較して均衡を図るべきではない」と指摘。「少年の刑罰の長期化は、早期の社会復帰を図る国際的な流れにも逆行する。少年の凶悪犯罪が減少している現状からも、今、刑を引き上げる必要性は乏しい」と述べた。
参照:毎日新聞
0 件のコメント:
コメントを投稿