「経営者の隠し財産が見つかった」「裁判で返金の判決が出た」-。過去の金融商品による損害の被害救済をうたい、弁護士費用や手数料を払わせようとする消費者トラブルの手口が昨年、神奈川県内でも急増した。実際に支払った被害者は70歳以上に集中。かながわ中央消費生活センターは「収入に不安のある高齢者が被害を回復しようとして、残ったお金もだまし取られるケースが多い」と注意を呼びかけている。
同センターによると、エビ養殖投資詐欺事件(平成20年)の被害に遭った県内在住の70代女性は、同事件で摘発された投資会社を名乗る人物から「会社の代表者の隠し財産が見つかった。被害者に返すよう国にいわれている」などと勧誘された。
紹介された電話番号にかけると「返金には弁護士費用などで約30万円が必要」といわれたため、消費者相談窓口に相談。この女性は「23年の暮れに損金を取り戻すという電話勧誘で100万円以上をだまし取られた」と話し、今回は思いとどまったという。
別の70代女性は健康食品の委託販売を装った詐欺事件(14年)の被害に遭った経験を持ち、昨年、「被害者弁護団を立ち上げた」という内容の弁護士事務所名の文書が届いた。
同センターが24年4~9月に県内の窓口に寄せられた相談を集計したところ、一度被害に遭った人がその被害に関連して再び勧誘される「2次被害」は720件と前年同期に比べ58件(7・5%)の減少。しかし、未公開株や社債といった商品を購入させる従来型の手口が減る一方で、被害救済をうたって弁護士費用や手数料などを請求する手口が急増している。
こうした手口は商品別に分類できないため、「役務その他サービス」として集計され、24年4~9月は164件と前年同期の69件に比べて約2・4倍となった。
被害対策弁護団をかたる文書を送りつけるなど手口が巧妙化しており、複数の人物がさまざまな役割を演じてだます“劇場型”も目立つ。破産管財人の所属する弁護士事務所の弁護士を名乗ったり、行政機関や消費者団体を思わせる名で「悪質業者を調査している」と告げて信用させるケースもあった。
振り込め詐欺と同様、限度額が設定されている口座振り込みではなく、被害者から直接手渡しさせる手口が増えており、振り込んだ口座を金融機関が凍結する方法が有効な手立てとならず、救済が難しいという。
同センターの担当者は「過去に投資トラブルの被害に遭った人は、狙われているという自覚を持ってほしい」と話している。相談窓口は消費者ホットライン(電)0570・064・370。
【2次被害】 一度被害に遭った消費者が、その被害に関連して再び勧誘され、新たな被害を受けるケース。過去の金融商品での損失を取り戻せるとして別の投資商品や未公開株を購入させたり、布団を購入した人に点検やクリーニングと称して勧誘し、別の布団を購入させる手口などがある。
参照:産経新聞
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