2013年1月12日土曜日

<薬ネット販売解禁>早速再開…安全懸念の声も

 風邪薬や頭痛薬などのインターネット販売を事実上の解禁状態に置いた11日の最高裁判決。厚生労働省は同日、緩和の方向で規制を見直す方針を打ち出し、勝訴が確定したネット薬局が販売を再開するなど、早くも影響が出始めた。ネット業界全体に期待が広がる一方、既存の業界や薬害被害者らからは安全面への懸念が聞かれた。

 判決を受けて原告のケンコーコムは同日午後、1類と2類のネット販売を再開。記者会見した後藤玄利(げんり)社長は「海外では認められているのに日本ではダメと言われる。新しいビジネスを国が止めており、若い人は起業できない」と、国側の対応を改めて批判。省令改正で早期にネット販売を可能とするよう求めた。

 さらに「売り上げは年5億円以上減った。ネットが危険と言われた状況は存在意義を否定されたのと同じで大きな損失だった」と強調。「医薬品のネット市場は成長している。情報技術も進歩しており、安全性と利便性を両立して販売していきたい」と述べた。現段階で国に対する損害賠償の請求は検討していないという。

 同じく原告のウェルネットは「規制は既得権益団体の圧力に屈したとしか言えない。規制強化しないよう強く訴える」とコメントした。

 インターネットモールを運営するヤフーの担当者は「規制は従来、違法と考えており原告勝訴を歓迎する」。ヤフーと共に規制見直しを求める署名をユーザーに呼びかけてきた楽天は「判決に沿った省令の見直しを国に強く求める」とのコメントを出した。

 ■ドラッグストア

 一方、顧客を奪われかねないネット通販に反対してきたドラッグストアの業界団体・日本チェーンドラッグストア協会は「判決はネット販売の安全性を認めたものではない。安全な提供方法を議論する必要がある」などとルール作りを求める声明を発表した。

 主要な販売ルートであるドラッグストアに配慮し、自らネット販売を行うことに慎重なのが大手製薬会社だ。昨年9月に3類のネット販売を始めた小林製薬は4カ月で打ち切り、今回の判決を受けても再開しない方針だ。同社は打ち切った理由を「売り上げが伸びなかった」と説明するが、ドラッグストア業界の一部で強い反発があったことも背景にあると見られる。

 ■薬害被害者ら

 日本薬剤師会は「ネット販売は医薬品の適正な選択・使用を揺るがしかねず、判決は誠に遺憾」とするコメントを発表した。同会は薬剤師による対面販売が重要として規制緩和に反対しており、関係者は「薬剤師資格を持つ国会議員や与党を中心に、対面販売の重要性を訴え続ける」と話した。

 全国薬害被害者団体連絡協議会の花井十伍(じゅうご)・代表世話人は「このまま全面解禁なら目先の利便性は高まるが安全性は損なわれる。とりわけ大手以外のネット薬局がきちんとした販売方法を取れるのか疑問だ」と懸念を示した。

参照:毎日新聞

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