罪を犯した知的障害者のサポートに精通した東京、札幌の弁護士らが、事件発生から社会復帰までの関わり方をまとめた実践書「障害者弁護ガイドブック」を発刊した。これまで取り扱った事例を紹介しながら、障害特性の理解や、福祉専門職との連携の必要性を指摘。若手弁護士や福祉関係者を対象に、「法廷内」だけでは終わらせない支援のやりがいを説いている。
執筆のきっかけは、生活苦などから軽微な罪を繰り返し、社会と刑務所を行き来する知的障害者の存在に対する法曹界の認知度の低さ。危機感を持った大石剛一郎(東京弁護士会、川崎市在住)、西村武彦(札幌弁護士会)の2弁護士らが、それぞれの支援事例を通して浮き彫りになった課題について意見を交わすとともに、Q&A方式でも説明している。
まず、基本的な弁護姿勢として、意思疎通が苦手な特性を理解し、当事者と向き合うことを挙げた。特に取り調べ時や裁判での弁護活動では、誘導されやすく罪の意識が乏しい傾向に注意し、家族の意見だけに左右されないよう呼びかけた。
次に取り上げたのは、社会福祉士や精神保健福祉士ら地域の福祉関係者とのネットワーク作り。居住場所の確保や療育手帳の取得、生活保護の申請など、弁護士一人では手に負えない分を、チームで取り組むよう提案。同情を誘い、ただ刑期を短くするのではなく、将来を見据えた支援に重点を置くよう訴えた。
一方、性犯罪や金銭管理などの問題にも言及。見守りチームを作ったのに再犯を防げなかったり、親族に財産を使い込まれる被害に遭ったりする事例も取り上げ、一筋縄ではいかない支援の現状を明らかにしている。
大石弁護士は「事件単位で考えていては、この分野の支援はできない。司法と福祉をつなぐ取り組みのすそ野を今後も広げたい」と話している。
A5判。1995円。現代人文社(03・5379・0307)。
参照:毎日新聞
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