路上に放置される飼い犬のふん対策として、大阪府泉佐野市が打ち出した全国でも異例の過料徴収が“名ばかり罰金”と化している。7月に千円の徴収を開始した同市は10月、過料額を5千円に引き上げたが、3カ月余りで処分件数はゼロ。実際に徴収する意向はないといい、識者からは「抑止効果が薄れる」との指摘も上がっている。
関西国際空港を対岸にのぞむ遊歩道が人気で市外から犬の散歩に訪れる人も多く、「ふん害」に悩まされてきた泉佐野市。「ふんの放置があれば、大阪府警OBの『環境巡視員』が警告の上、毅然(きぜん)と過料の支払いを求める」。7月の徴収開始当時、市は積極的な対応を公言していた。
しかし、実際には回収道具を持たずに散歩し、ふんを放置した飼い主に対し、巡視員はポリ袋を提供。口頭での注意にとどめる運用をしている。市環境衛生課は「マナーの向上に向けた啓発が第一で、よほど悪質なケースでない限り徴収する考えはない」と話す。
ふん放置の状況が改善しない場合には、市は清掃や見回り費用を捻出するため、来年度から飼い主に一律課税を行う「犬税」の導入を検討している。しかし、ふんの放置が確認されたのは7月の242件から8月には424件に増加するなど、現状では徴収の効果を確認できていない。市内の男性会社員(38)は「積極的な徴収もしないのに、マナーを守っている飼い主に税負担を求めるのは納得がいかない」と憤る。
ペット法学会副理事長の吉田真澄弁護士は「泉佐野市と同様にふんの放置が社会問題になっていたパリでは2000年代初頭、2万円程度の罰金を実際に徴収することで『花の都』を取り戻した」と指摘。「抑止効果を狙うのであれば『実際にペナルティーがある』と住民に伝わることが重要で、徴収を行うべきではないか」と話している。
■積極徴収で効果も
住民の良識に訴えるべきか、厳罰姿勢で臨むのか。「罰金」徴収の是非をめぐり、全国の自治体でも模索が続いている。
徴収効果を強調するのは、今年から海水浴期間中の須磨海水浴場での喫煙に対し、過料千円の徴収を始めた神戸市。約1カ月半で延べ128人に納付を求めた結果、喫煙把握件数が前年の1921件から768件に減少。市は「注意にとどめていた昨年までとは利用客の意識が明らかに変わり、家族連れなどから好評だった」と振り返る。
一方、徴収を行わなくても問題の解決につながるケースもある。
大阪府箕面市は平成22年、ニホンザルの出没による農作物被害などを受け、餌やり行為に1万円以下の過料を徴収する条例を施行。餌を与えていた観光客の数珠つなぎの車列が消えたことで人里へ下りてくるサルが減少する好循環につながったという。
実施している過料徴収の廃止を検討する自治体もある。
全国に先駆け14年、路上喫煙に対し2千円の過料徴収に踏み切った東京都千代田区では、吸い殻の放置件数が当初に比べ約6分の1に激減。累計徴収額は約10年で1億円を突破した。区は「収入を目的にしているわけではない。『千代田区でたばこは吸えない』という認識も定着しつつあり、将来的に罰則のない対策へ戻すタイミングを図っている」と話す。
参照:産経新聞
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