昨年、狭小の個室を住居として提供していた「違法ハウス」に、東京消防庁の調査が入り、施設は防火施設の不備などで警告を受けた。こうした「違法ハウス」は法律や条例を無視した寿司詰め状態の狭小の部屋で、格安で提供される。「シェアハウス」や「レンタルオフィス」などの名目だが、実態は「住居」である。
業者はその後、施設を突如閉鎖したが、社会的弱者の切実なニーズが新手の貧困ビジネスを生み出している。NPO法人「住まいの改善センター」坂庭國晴氏が違法ハウスの実態を明かす。
「古い一軒家を改築したある違法ハウスでは、6畳間を3人でシェアしていました。いびきや鼻をかむ音などが『うるさい』と、些細なことからケンカになることも多く、最近増えている女性専用の違法ハウスでもトラブルは絶えません。相手の所有物を隠したり、特定の相手を無視する陰湿なイジメもあります」
それでも利用者が引きも切らないのは家賃が安いという理由だけではない。
「近ごろは敷金のような初期費用や保証人が不要の物件もありますが、定職も貯金もなければ通常の賃貸物件への入居は困難です。あるケースでは福祉事務所が入居審査不要の違法ハウスを生活保護受給者に紹介していた。行政が違法ハウスの横行に加担しているようなものです」(戸舘弁護士)
人間が健康的に「人間らしく」生活するという観点は行政にはない。貧困問題に詳しい戸舘圭之弁護士は警鐘を鳴らす。
「違法ハウスでは通常の賃貸借契約ではなく、利用者に不利な独自の利用契約を結ばされることが多い。『施設付鍵利用契約』といった書類を交わし、家賃を1日滞納しただけでルームキーの暗証番号を変更されたケースもありました。
業者の言い分は『部屋ではなく鍵を貸しているのだから賃貸借契約には該当しない』という呆れたものでした。そうした違法行為があっても、立場の弱い利用者はほとんどが泣き寝入りするしかない。貧困ビジネスが後を絶たないのは、国の社会保障、住宅政策が不十分であることの表われです」
国の無策が貧困ビジネスを支えている。
参照:NEWS ポストセブン
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