長引く景気低迷により、依然として厳しい雇用情勢が続いているとされるが、就職活動で思うように内定を得られず、「就活うつ」になる人や、大変痛ましいことであるが自殺をしてしまう人が増えているという。
労働相談を中心に活動するNPO法人POSSEが2010年度に学生約600人へのアンケートにより集計した「就活調査」によると、就職活動を経験した7人に1人が就活うつの状態になったようで、また警視庁の統計では、就職の失敗を理由に自殺した人は2011年には150人にのぼり、2007年の60人と比較すると4年間で2.5倍に増加したとされている。
就活うつになってしまったり、自殺してしまう人が増えている真因は断定できないが、一部には採用面接にて、面接官から過度に人格や経歴を否定するような言葉を投げかけられたり、威圧的な言動で萎縮させられるような「圧迫面接」を受けたことで、うつ病になってしまった事例が存在するようだ。
圧迫面接を行なう企業側にとっては、面接受験者にプレッシャーをかけることでストレス耐性や本音を探るといった意図があるようだが、なかには採用選考における明確な意図もなく、面接官の個人的な感情で辛辣な態度を取るような、悪質な事例についての指摘もある。
それでは、もし圧迫面接を受けたことで、面接受験者がうつ病を発症してしまったり、自殺してしまったような場合には、本人や遺族は圧迫面接を行なった企業から慰謝料を得ることが可能なのだろうか。川崎政宏弁護士に聞いた。
●圧迫面接とうつ病の発症や自殺との因果関係の立証が困難で、慰謝料を得るのは難しい
「一般に、企業の採用活動において、志望者に対して厳しい質問で、問い詰めるタイプの面接を行うことを圧迫面接と呼んでいるようです。採用側にとっては、志望者の突作の判断や反応を見るために用いられることもあるようですが、ときに面接官による暴言や心理的追いつめにより、受験者がうつ状態となり、思い詰めて自殺ということも考えられないわけではありません。就活自殺が話題になったことも記憶に新しいところです。」
「こうした企業の面接官による暴言等に対して、慰謝料請求ができるかについて、どう考えたらよいでしょうか。会社内での上司等によるパワハラ、セクハラ等と似たような問題状況はあるものの、雇用関係に入る前段階での出来事ですから、様相を異にします。」
「暴言による不法行為に基づく損害賠償請求を考えた場合、圧迫面接は質問者が侮辱、罵倒目的で行うものではないので、故意に基づく侮辱行為ではないと弁解される可能性があります。そうなると配慮に欠けた質問による精神的損害の請求を求めることになりますので、かなり難しくなります。」
「また暴言と、受験者が病気を発症させたことや、自殺をしたこととの因果関係の立証が必要となりますから、この点もかなり困難が予想されます。受験者側の性格や素質が問題とされたり、他の要因が病気の発症や自殺の原因ではないかと弁解されるからです。」
「慰謝料請求だけを考えると、裁判に訴えることは厳しい側面がありますが、こうした圧迫面接が好ましいものでないことも指摘されており、採用側の企業として社会的信用を失いかねない問題でしょうから、安易に用いることは避けたいところです。」
●企業にとっても社会的信頼を失いかねないので、安易な圧迫面接は避けるべき
つまり、圧迫面接での配慮に欠けた質問は質問者が侮辱、罵倒目的で行うものではなく、故意に基づく侮辱行為ではないと弁解される可能性があり、このような場合、暴言による精神的損害の請求を求めること、また、受験者の病気や自殺との因果関係の立証がかなりの困難が予想されること、以上の2点から慰謝料を得ることは難しいということになる。
しかし企業にとっても、圧迫面接を行なったことで裁判になった場合には、たとえ慰謝料を支払う必要がなくとも社会からの信用を失うことになりかねないので、川崎弁護士も指摘しているように、安易に圧迫面接の手法を用いることは避けるべきだ。
最後に法的な解決策とは異なるが、就職活動に励む人は、もし面接で過度な批判を受けたり、それまでの自分の経歴を否定するような言動を受けたとしても、決して自らを追い詰めることなく、苦しいときは周囲の人に相談するなど、心の支援を求めてほしい。
参照:弁護士ドットコム
1 件のコメント:
一言でまとめれば「諦めろ」ということ。日本では立場下のやつはいくらでも罵っていいのさ
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