2014年3月19日水曜日

上司から「辞めちまえ」と言われた時、冷静に考えるべきこと

 もし、上司から「もう、お前、この会社を辞めろ!」と言われたら、どうするか。多くの人は考え込んでしまうだろう。落ち込んでしまい、出社することが嫌になり、本当に辞めてしまう人もいるかもしれない。だが、それでは次の職場に行ったとしても心の傷となって残ってしまうだろう。そこで今回は、上司から「辞めろ!」と言われた時に考えるべきことを参考として、5つ挙げてみた。安易にそのまま辞めるのではなく、どうしたら納得できる判断をすることができるか、焦点を合わせてみた。

1.会社の意思なのか、それとも個人の意思なのか

 上司が課長や部長といった管理職が「辞めろ!」と言ったならば、それは法律上、「会社の意思」といえる。しかし、上司が本当に役員や人事部などの了解をとった上で「辞めろ!」と言ったのかはわからない。もしかすると、部下に仕事のミスがあり、怒りのあまり、つい口にしてしまった言葉かもしれない。だとしたら、部下としてこう切り返したい。

「それは会社の意思ですか。それとも、部長おひとりの考えですか」

 あくまで冷静に、慎重な物言いをしよう。すると、上司は何らかの回答をするはずだ。その回答は、記録をしておく必要がある。何も記録をしないと、後々、人事部などと話し合う時に「言った、言わない」といった水掛け論になる。実際に、リストラの現場では、この水掛け論が多い。

 ただし、小さな会社の場合は、社長から直接「辞めろ!」と言われる可能性がある。その際は「会社の意思」と受け止めていい。大企業ならば、さすがに社長が社員の前に現われ、言うことはないだろう。いずれにしろ、確認することにはためらいがあるだろうが、会社の意思であるのか、個人的な考えなのかを上司にきちんと確認しておくべきだ。

 仮に管理職である上司個人の考えならば、それを受け入れて辞める必要はない。管理職に部下を辞めさせる権限は、通常、与えられていないからだ。管理職は、役員や人事部などの了解を取るべきであり、ひとりの一存で部下の雇用を奪うことはできない。部下としては「辞めろ!」と言われたら、「辞めません」と答え、毎日出社をしていればいい。

2.解雇か、それとも退職勧奨か

 次に聞き出したいことは「これは解雇であるのか、それとも退職勧奨であるのか」ということ。解雇と退職勧奨は、意味合いが大きく異なる。このあたりを正しく理解していないと、大きなトラブルにつながる。解雇には「懲戒解雇」「整理解雇」「普通解雇」といった3種類がある。それぞれの詳細についてはここでは省略するが、解雇とは会社の側が労働契約を一方的に解除することである。つまり、会社員がそこに残りたいと思ったところで、それとは無関係に粛々と離職の手続きをする。

 一方、退職勧奨は、会社がその社員に退職を勧めること。例えば、人事部などが本人に「このまま、残っていても活躍できる場はないから、お辞めになられたらいかがですか」と促す。このいずれかであるのかが、わからないと、対策が取れない。ちなみに、退職強要とは退職勧奨がエスカレートしたもの。例えば、社員が「辞めない」と言っているにも関わらず、「辞めろ!」と繰り返し言うことや、仕事を取り上げ、精神的に滅入らせ、辞めるように仕向けることなど。これは、民法の損害賠償の請求対象行為であり、いわゆる不当な行為と呼ばれるもの。社会常識をわきまえているならば、避けるべきことだ。

3.もし「解雇」だったら

 解雇ならば、3種類のうち、いずれかであるのか。そもそも、なぜ、解雇になるのか。これらを「解雇通知」に書くことを人事部に求めよう。通常は、人事部が解雇通知に書くべきものである。当然、解雇になった日付、さらに社印などもあるべきである。その上で、あなたが解雇を受け入れるならば、そのまま辞めるしかない。解雇通知を持って、最寄りのハローワークなどに出向き、手続きを取ると、一定の期間の後で失業給付を受けることができる。

 もし、解雇の理由に納得がいかないなら、弁護士や労働組合ユニオンなどのもとへ相談に行くことを考えてもよいだろう。ただし、その場合、弁護士や労働組合ユニオンは会社と法的に争うことを「仕事」とする。従って、あなたに会社と闘うことを促そうとする可能性がある。会社と争うと、一定のお金や精神的なエネルギー、さらに時間などが消えていく。再就職するにあたり、悪影響を及ぼすこともありうる。そのあたりまで含め、慎重に、冷静に、広く考えるべきだ。

4.もし「退職勧奨」だったら

 退職勧奨を受けたとして、会社に残りたいのなら、「私は辞めません」とはっきりと答えること。意思を伝えないと、会社は「もしかしたら、この社員は辞めるかもしれない」と判断し、繰り返し、面談などを求めてくる可能性がある。繰り返し、「辞めたほうがいい」と言われる。そのような面談を受けることを断るならば「私はこのまま会社に残り、貢献してまいります。退職勧奨は、今後、受けません」と書いた文書を直接、人事部などに渡したほうがいい。その際、印鑑をつけて、日付を書き込むことを忘れないようにしたい。水掛け論を防ぐためにも、双方のやりとりはICレコーダーなどに録音しておいたほうがいい。

5.専門家に相談をする

 解雇にしろ、退職勧奨にしろ、退職強要にしろ、1人の会社員ではなかなか解決できないものだ。私がこの10数年、取材してきた限りでいえば、そのまま放置してすんなりと解決した話は一度も聞いたことがない。辞めるにしろ、残るにしろ、やはり、この問題に詳しい人に相談をしたほうがいい。会社員の立場からすると、役員や人事部から「辞めろ!」と言われていることを、他人に相談することは恥ずかしいと思うかもしれない。少なくとも、自信を持って口にできることではないだろう。しかし、自分が納得のいく判断をしないと、たとえ辞めるにしろ、心の傷として長い間、残ることがある。

 労働問題に精通している「労働弁護団」の弁護士や労働組合ユニオン、各都道府県の労政事務所、全国の労働基準監督署、労働局雇用均等室などに相談をすると、いいだろう。複数の人と会って話をして、助言をもらうと、今後の対策がより具体的に見えてくるからだ。

「辞めろ!」と言われて、売り言葉に買い言葉になり、激しい口論をすることは避けるべき。感情論からは、何も生まれない。常に冷静に考え、対処していくことが大切だ。

参照:DIME編集部

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