2014年3月28日金曜日

相続対策は「何もしていない」が81.0%――相続市場に必要なものとは?

 住宅・不動産コンサルティングのハイアス・アンド・カンパニー株式会社が2015年1月に税制改正を控える「相続」に関する意識調査を実施し、20歳以上の男女2058名の回答を得ました。今回はその結果から予測される相続における課題について考えてみたいと思います。


●相続意識調査概要

1. 調査名:「相続に関する意識調査」
2. 調査方法:ハイアス・アンド・カンパニー株式会社の運営サイト上でのアンケート。選択式にて回答。
3. 調査期間:2014年2月8日~2月16日
4. 有効回答数:2058名
(被相続人n=546、相続人n=1512)
(被相続人:20代1.3%、30代3.3%、40代11.4%、50代28.6%、60代以上55.5%)
(相続人:20代6.9%、30代19.2%、40代31.3%、50代30.3%、60代以上12.2%)

●自分の資産は自分と配偶者で使いたい

1. 相続する資産に対する考え方は?(被相続人:相続財産を渡す側)

・できる限り配偶者には残したい 47.9%
・できる限り子どもには残したい 31.8%
・できる限り自分で使い切りたい 9.9%
・誰ということではないが残したい 7.0%

2. 1.の回答の理由は?

・自分の資産は自分(および配偶者)で使いたいから 40.4%
・相続争いの原因を作りたくないから 30.5%
・相続人に世話になった(なっている)代償だから 19.1%

 まず、被相続人を対象に相続する資産に対する考えを聞いたところ、「できる限り配偶者には残したい」(47.9%)が最も割合が高く、次いで「できる限り子どもには残したい」(31.8%)、「できる限り自分で使い切りたい」(9.9%)という結果となりました。

 その理由で最も多かったのは「自分の資産は自分(および配偶者)で使いたいから」が40.4%、次に多かった回答は「相続争いの原因を作りたくないから」(30.5%)でした 相続人である子どもたちのことを考えたときに、トラブルの種になるような資産を残したくないという考えが強いようです。

●「相続トラブルは起こらない。だから対策はしていない」が8割!

3. 相続に際し、もめ事は起こると思いますか?

・起こらないと思う 34.4%
・おそらく起こらないと思う 48.1%
・おそらく起こると思う 13.3%
・起こると思う 4.2%

 相続の際、もめ事は起こらないと思うかどうかを聞いたところ、「起こらないと思う」(34.4%)「おそらく起こらないと思う」(48.1%)を合わせて、8割強という結果でした。

4. 何か相続対策はしていますか?

・何もしていない 81.0%
・生命保険への加入 7.5%
・遺言書 7.3%
・生前贈与 3.1%

5. 相続対策をしていない理由は何ですか?(4.で「何もしていない」と回答した人)

・対策するほどの資産がないから 52.3%
・時期尚早だと思うから 36.4%
・対策の取り方が分からないから 10.0%

 相続対策について聞いたところ「何もしていない」が81.0%と、圧倒的な割合でした。。また、対策を何もしていない理由は、「対策するほどの資産がないから」が52.3%と半数以上となりました。資産が多くないから対策はしていない、という人たちが多いようです。

●相続相談は誰に……?

6. 相続について誰に相談していますか(しようとしていますか)?

・誰に相談したら良いか分からない 48.9%
・血縁者 15.0%
・弁護士 11.4%
・税理士 7.7%
・司法書士 7.5%
・銀行 5.5%
・不動産会社 3.8%

 誰に相談しているか(しようと思うか)聞いたところ、最多が「誰に相談したら良いか分からない」が約半数、次いで「血縁者」、「弁護士」となりました。相談したくても誰にしたら良いか分からず、その結果何もしていないという構図が見て取れます。

●意識調査の結果から浮かび上がる課題

 このアンケート結果をまとめると、一般の人の相続に対する意識は以下のようになります。

・「自分たちの財産は自分たちで使いきるつもり」
・「なぜなら相続トラブルを避けたいから」
・「でも、財産が少ないから相続争いは起きないと思っている」
・「だから特段の相続対策はしていない」
・「そもそも誰に相談したらいいのかも分からない」

 この意識の低さはとても心配になる結果です。そもそも、相続はいつ発生するか分かりません。不意に発生するのが相続です。亡くなるまでに財産を使い切りたいと思っていても、必ずある程度の現金や自宅などの資産は残るのです。

 まったく準備をしないまま、いくらか財産を残した状態で相続が発生する。これが相続トラブルのはじまりです。裁判にまでもつれ込む相続トラブルは年々増加していますが、司法統計年報によると、遺産分割事件の71%は5000万円以下の遺産額を巡って争われています。相続税の有無や、資産の多いか少ないに関係なくトラブルは起きるのです。

●社会問題化が懸念される「相続」

 2015年1月の相続税の改正を迎えるにあたり、相続に対する関心が高まっています。相続をテーマに、テレビや雑誌などでもトラブルの事例を頻繁に取り上げています。

 近年、

 「自分の場合は大丈夫だろうか?」
 「相続税はいくらになるのだろう?」
 「自宅などの不動産は誰にどのように相続したらいいのだろう?」

という不安を持っている人は確実に増えています。

 しかし、相続について不安はあるものの、する側も受ける側もほとんど何のアクションも起こしておらず、誰に相談してどう準備すればいいのかすら分からないのです。

 日本の資産の多くは、60歳以上の高齢者世帯に偏在しています。その莫大な資産がこれから数十年をかけて高齢者世帯から次の世代に移転していきます。その相続の際に、資産をどう評価するか、誰に引き継がせるのか、納税資金は確保できているのか――。こういうことを当事者たちは知らずに相続を迎えることになります。相続がこれから本格化する中、トラブルは大きな社会問題になるかもしれません。

 トラブルを防ぐためには「ウチに限ってもめごとなんて起こらない」と高をくくるのではなく、事前に当事者間でよく話し合っておくことが大事です。今後、社会的には気軽に相談できる場所を整備することが求められていくでしょう。

参照:Business Media 誠

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