桜咲く春。新生活への期待を胸に、さあお引越し! と思った時に巻き込まれがちなのが敷金トラブル。「敷金がナゾの修繕に使われて返ってこない…」というケースもあれば、「タバコのヤニ汚れがあるから、クロスを全部張り替える」「畳の一カ所に焼け焦げがあり、全面交換が必要」「バスルームの床の傷みがひどいからバスルームごと交換する」などと、追加で数十万を請求されるケースもあるというから驚きだ。
これらの事例を紹介し、「正しい法律知識があれば敷金は取り戻せます」としているのが、司法書士&弁護士による『敷金返せ! 司法書士が教えます』(橋本正美:著、小宮山昭一:監修/出版文化社)。国土交通省などが定めた『原状回復をめぐるトラブルとガイドライン』に基づき、敷金奪還のための考え方をレクチャーしてくれる頼もしい本だ。
敷金トラブルが発生するのは、「きれいな状態で貸したから、返すときもきれいにして返すように」という「現状回復」の義務において、どちらが費用を負担すべきかがあやふやだから。ここで、基本的な費用の負担区分をおさらいしておこう。
●貸主負担=普通に暮らしていれば避けられない「通常消耗」、「経年変化」(例:冷蔵庫やテレビなどの電気焼け/日照によるクロスの変色/エアコン設置による壁のビス穴など)。
●借り手負担=故意・過失や通常の使用方法に反する使用、借り手の責任によって生じた消耗やキズ。もしくは不具合を放置した&手入れを怠ったことが原因で発生した消耗やキズなど(例:クーラーから水漏れし、放置したため壁が腐食/キャスター付きの椅子によるキズ&へこみ/下地ボードの張替が必要なくぎ穴/換気扇の油汚れなど)。
さて、問題は「ヤニによるクロスの全面張り替え」や「畳の全面交換」「バスルームの全交換」などを求められた時だ。たしかに過失があるとはいえ、全面負担の義務はあるのだろうか? 本書での見解は…いずれも義務ナシ!
●ヤニによるクロスの全面張り替え
クリーニングで除去できる程度のヤニ(たとえば1日20本程度の喫煙でつくヤニ)については「通常の消耗の範囲」。つまり貸主の負担。ただし、除去できないヤニ汚れは「賃借人のその後の手入れなどの管理が悪く発生、拡大した」としたものとみなされて借り手の負担になる。
●1枚に焼け焦げを作った畳の全面交換
すべての畳の色を合わせたい賃主側は、全面交換を希望することが多いが、次の入居者に備えるためのものなので、借り手の負担は実際に焼け焦げた1枚分のみ。
●床が傷んでいるからバスルームごと交換
部屋の内装の価値は、年数が経過するにつれて減少していく。そのため、借り手に現状回復の義務が発生しても、減額した価値以上の修繕費を負担する必要はない。しかも、バスルームすべてを交換するのは明らかな過剰リフォーム。
本書では、理論武装のための法律知識、少額裁判を起こす方法、敷金以外の賃貸トラブルについても詳しく解説してくれる。近々お引越しを考えている方には、ぜひご一読をオススメしたい。
参照:ダ・ヴィンチニュース
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